金属錯体に迫る大きなりん光速度定数をもつ有機分子の開発
Project/Area Number |
22KJ2156
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Project/Area Number (Other) |
22J12961 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小村 真央 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 発光性材料 / 室温りん光 / メタルフリー / 光応答 / 配座異性化 / 1,2-ジケトン |
Outline of Research at the Start |
りん光は有機ELで理論上100%の発光効率を達成しうる重要な現象であり、発光過程と非発光過程の速度定数の比で効率は決まる。金属を含まない有機分子による高効率な室温でのりん光の実現が望まれているが、りん光速度定数kpが金属錯体よりも非常に小さく、競争する非発光過程によって効率が低下する問題がある。従来は非発光過程の抑制を重視し、結晶状態で室温りん光を示す有機分子が報告されてきた。しかし結晶性材料は格子欠陥などに伴う物性の低下が懸念され、フレキシブル材料への応用は困難であるうえ、これらの有機りん光材料は未だりん光効率が低い。これに対し本研究ではkpの向上により高効率な有機りん光材料の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究が目指す金属錯体に迫る大きなりん光速度定数を持つ有機分子の設計指針を築くためには分子構造とその光物性の相関を明らかにすることが重要である。そこで2022年度は実施計画に従い、テニル分子骨格を基盤に導入する置換基や基盤骨格の一部を変更した誘導体を合成し、光物性の確認を行った。具体的には主に電子供与基の検討を試みた。量子化学計算によってあらかじめ高いりん光速度定数を持つと予測される構造を絞り込み、実際に合成し、分光測定を行うことでりん光速度定数を算出した。その結果、当初目標としていた10000 s-1台のりん光速度定数を持つ有機分子の開発に成功した。また、量子化学計算と分光測定からから算出した速度定数を比較することで適切な計算レベルの確認も行った。 また、上記研究の関連で、2021年に報告した(過冷却)液体状態で室温りん光を示す分子の研究に進展があった。この分子の結晶が紫外光に応答し、発光強度および発光波長を変化させた後、過冷却液体に融解する現象が確認された。この特性を生かし、融解過程を可視化することに成功している。この現象は分子配座に依存したりん光速度定数が大いに関与しており、当該年度はこの内容について論文執筆し、アーカイブに投稿した。そして当該年度を越えた2023年度5月現在、イギリスの学術機関である王立化学会のChemical Science誌に受理、2023 Chemical Science HOT Article collectionとして紹介、本研究成果を描いたカバーアートはInside front coverとして採択されたほか、所属大学からもプレスリリースされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大きなりん光速度定数を持つテニル分子骨格を基盤とし、導入する置換基やテニル骨格の一部を変更した誘導体を合成し、光物性の確認を行った。量子化学計算を用いた解析からテニル骨格は通常の有機分子と比較して特にスピン軌道相互作用が非常に大きく、大きなりん光速度定数に寄与していることが分かった。また、テニル骨格そのものを一部変更すること、あるいは側鎖として電子受容および供与性置換基のどちらを導入してもりん光速度定数が向上することも予測された。本年度は、電子供与基の導入あるいはテニル骨格内の化学修飾を施した分子について実際に合成を行い、分光測定結果から速度定数を確認した結果、量子化学計算で予想された傾向通りのりん光速度定数の変化が確認できた。そのうちの一つは、研究開始当初目標としていた10000 s-1台のりん光速度定数を示した。 さらに、テニル骨格の一部を変更した分子が、分子配座に依存した大きなりん光速度定数をもつことから、紫外光による光励起及び配座変換によって融解する性質を示すことを発見した。この性質を応用することで融解過程の可視化に成功した。 このように量子化学計算での予測と実際の測定結果の比較、当初目的としていた大きなりん光速度定数を持つ分子の合成を達成しただけでなく、大きなりん光速度定数を持つ分子が実際どのように応用できるのかを示せたため、本研究が当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、テニル骨格を基盤とし、構造と物性の相関を確認する。具体的には、前年度の知見を踏まえつつ、電子求引性置換基の検討を主軸に量子化学計算による解析、精密有機合成、分光測定を行うことで優れたりん光速度定数を持つ有機分子の開発を引き続き行う。なお上記の光応答性を示した分子のように、当初の計画に縛られず、合成した分子の凝集状態における物性にも注目することで大きなりん光速度定数に起因した新たな物性の獲得及び現象の解明も試みる。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)