Project/Area Number |
22KJ2183
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Project/Area Number (Other) |
22J20164 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯田 実花 大阪大学, 人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 源氏物語 / 呼称 / 邸第呼称 / 長編化 / 王朝物語 / うつほ物語 |
Outline of Research at the Start |
中古~中世期に成立した王朝物語は、物語の主題や登場人物などが各々異なる。そうした王朝物語に共通するのが、「平安京」という物語の舞台である。それはまた、成立当時の作者・読者が暮らした空間でもあった。この「平安京」という舞台を、それぞれの物語がいかに描くか明らかにすることで、現実の空間を人々がどう認識し、どう素材として物語を描いたのかを見いだすことができるだろう。邸第呼称という、「平安京」内部の邸第を指し示す呼称に着目することで、「平安京」の描き方から、物語の素材の在り方、成立の仕組みを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中古~中世期に成立した王朝物語について、邸第呼称を分析することで、物語内であらわれる表現がどのようにして生まれ、継承された、あるいは変容してきたのか検討し、物語が成立した仕組みの解明を試みるものである。今年度は、(Ⅰ)『源氏物語』本文の翻刻、(Ⅱ)『源氏物語』における邸第呼称に着目した検討、(Ⅲ)呼称データの収集を行った。 (Ⅰ)鎌倉時代書写と思しい春曙文庫所蔵の「源氏物語断簡」の翻刻を行い、解題とともに大阪大学古代中世文学研究会の雑誌『詞林』に投稿した。 (Ⅱ)主に以下の三点を行った。①『源氏物語』の邸第呼称が命名される場面に着目し、邸第呼称の命名を起点として物語が展開していることから、物語の長編化を導く一手法であることを明らかにした。これを大阪大学国語国文学会の雑誌『語文』に投稿した。②『源氏物語』において異なる三つの邸第に「三条宮」という共通した呼称が用いられている点に着目し、これらが歴史上「三条宮」に住んだ皇女と重ね合わされていること、特に女三宮はその重ね合わせによって実際の出自より身分の高い皇女として描かれていることを指摘した。これを中古文学会の雑誌『中古文学』に投稿した。③『源氏物語』の登場人物落葉宮が住む「一条宮」について、「一条」という立地に着目することで、『源氏物語』における平安京が「一条」を孤立した土地として設定していることを指摘した。この内容の口頭発表を、大阪大学古代中世文学研究会で行った。 (Ⅲ)『竹取物語』『落窪物語』『狭衣物語』『栄花物語』の物語本文の呼称と、『源氏物語』の古注釈における呼称の収集を行っている(進行中)。 以上により、『源氏物語』の邸第呼称に着目することで、王朝物語が成立する過程を想定するとともに、物語にいかに平安京が設定されているかという問題を検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・『源氏物語』の未翻刻資料について翻刻を公表することができた。 ・『源氏物語』の邸第呼称として「三条宮」「一条宮」に関わる問題を発表・公表することができた。 ・とくに中古期の王朝物語について、邸第呼称の用例を収集した。 以上のような成果が認められる一方で、『源氏物語』を検討するなかで邸第呼称と人物呼称との関わりが重要な問題であることを確認し、その検討に時間を要したため、邸第呼称にかかわる『うつほ物語』を中心としたほかの中古期王朝物語における検討を十分に進めることができなかった。したがって、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・令和5年度に口頭発表を行った研究成果を論文化し、また論文執筆のなかで新たに問題として見出した『源氏物語』の邸第呼称と人物呼称の関係についても口頭発表・論文化を行う。 ・中世期の王朝物語における邸第呼称の用例収集をすすめ、中古~中世期全体を見渡したうえで邸第呼称における法則性の違いや性質の変化について検討を行う。 ・『うつほ物語』の諸本調査を進める。 ・『源氏物語』を中心に、古注釈などの享受資料に見える呼称の調査を進める。
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