応力を起点とした骨配向化機序解明とそれに基づく骨機能化誘導材料の創製
Project/Area Number |
22KJ2204
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Project/Area Number (Other) |
22J20843 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 26040:Structural materials and functional materials-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松坂 匡晃 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
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Keywords | オステオサイト / メカノセンシング / 骨力学的機能適応 / 骨異方性微細構造 / アパタイト配向性 / 細胞配列制御 / 骨力学的機能適応、 / アパタイト配向化 / 細胞配列 |
Outline of Research at the Start |
本研究では力が骨を強くする仕組みを解明することを目指す。骨の強度には骨の密度や量のみが重視されてきたが、近年骨の質に焦点が当てられ、特に規則的な構造が重要であることが明らかとなってきた。こういった規則構造は骨が外部からの力を常に感知しその力に耐えうるよう最適に構築されるが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究ではこのメカニズムを細胞・遺伝子レベルから解明し、さらにはその生物的機構を人為的に作り出す材料・薬剤を創製する。これにより、寝たきりや宇宙滞在で骨に力がかからない状態であったとしても、生体内ではあたかも力がかかっているかのような健康な骨を維持することが可能となる。
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Outline of Annual Research Achievements |
骨は生体内において荷重支持という機能を全うするために、常に骨自身にかかる応力場をモニタリングしつつ、その応力場に応じた異方的な微細構造を構築することで、力学機能を維持している。特に、骨密度よりもはるかに強く骨の強度を支配する骨配向性(骨基質中のアパタイトc軸/コラーゲン優先配向性)が応力場に応じてどのように構築されているのかを解明することが重要である。本研究ではこれまでに、生体内類似のin vitro共培養モデルを樹立することで、オステオサイト(骨中の応力センサー細胞)が流体せん断刺激の加速度に依存した応答を示すことを明らかとし、さらにはその加速度の大きさに応じて発現される骨配向化制御遺伝子を同定することに成功した。 令和5年度はその成果をもとに、in vivoにおいて応力に応じた配向化制御機序を明らかにすることを目的とし、新たに遺伝子改変マウスモデルに適用可能な人為的周期負荷モデルを構築した。本モデルを用いることで、骨は負荷に対して骨密度以上に骨配向性を大きく変化させ適応することが初めて明らかとなった。これまで重視されてきた骨密度はスカラー量であるのに対して、骨配向性は方向性を持ったベクトル量であり、異方的な応力に対する適応機構として骨配向性を変化させることは効率的かつ合理的な応答である。さらには、負荷ひずみの最大値(振幅)ではなく、負荷のひずみ速度を感知して顕著な適応を示すことが明らかになり、in vitroの結果と合わせてオステオサイトの流体加速度感受が骨の配向性制御の駆動力となっていることが示され、さらには配向化制御遺伝子が欠損したマウスでは適応ができなくなることが明らかとなった。すなわち、通常骨は応力の変化に対して骨の材質に対応するアパタイト結晶の配向性を変化させることで適応し、その適応は特定の遺伝子により強く支配されていることが初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度では、骨配向性構築に対して支配的な負荷パラメータの解明を目標としていたが、さらにその流体パラメータにより誘起される配向化制御遺伝子を見出すことに成功した。具体的には、独自の人為的周期負荷モデルの構築を早期に完了し、一軸負荷に対する骨の適応が配向性によって担われていること、さらにはその配向性制御に関わる遺伝子を同定した。本研究により確立されたモデルは、生きたマウスの脛骨に対して荷重方向に任意の応力を負荷することが可能であり、その負荷に応じた生物学的応答を介した機能適応、さらにはそれを決定する刺激パラメータに注目可能である。本モデルの開発により、異なる負荷刺激に対して、骨密度以上に骨配向性が変化し応力場に適応することを明らかとし、さらには「ひずみ速度」が骨配向性を決定する負荷パラメータであることを初めて見出した。これは前年度までで見出した、オステオサイトが流体の「加速度」に敏感に応答して配向性を決定することとも一致しており、細胞実験、動物実験の両面から負荷に応じた骨配向化機構が明らかとなった。 加えて、前年度の細胞実験で候補として同定された配向性の制御遺伝子を欠損したマウスでは負荷に対する配向性上昇が生じず、正常な力学的機能適応が破綻することが明らかとなり、応力に応じた骨配向性を決定する遺伝子を世界に先駆けて同定するに至った。負荷に応じた骨配向性構築については骨医学の専門ジャーナルにて発表し、以降の成果についても既に多数の学会発表にて高い評価(3件受賞)を得ている。以上より、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に構築した人為的負荷モデルを用いて、負荷刺激に対する骨の配向性適応機序を遺伝子レベルから解明することを目指す。具体的には、遺伝子組み換えモデルを作製し配向化遺伝子の欠損が骨の機能適応に与える影響を解明する。遺伝子欠損骨に対して、骨形態・骨密度と同時に、微小領域X線回折法によるアパタイト結晶配向性および骨強度の定量解析を実施する。加えて、遺伝子組み換えモデルでの人為的負荷に対する適応破綻メカニズムを細胞配列・ネットワーク構築に注目しながら解明を行う。応力感受を担うオステオサイトおよび骨細管の形態・配置が重要となると考えられる。さらには、前年度の成果である負荷ひずみ速度変化に応じた骨配向性を予測するために、オステオサイトの応力感受・適応メカニズムを考慮した、シミュレーションモデルを構築する。特に、応力場⇔オステオサイトの配列方向(細管・樹状突起の進展方向)⇔アパタイト結晶配向方位の関係性に着目し、応力と骨配向性の対応関係を決定する機序を明らかにする。これらの成果を積極的に学会で発表するとともに、国際雑誌にて論文の投稿を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(18 results)