Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究では,縄文時代にあたる約7,500-5,000年前の日本において,気温が現在より2℃高く,海面が2~3m高かったと推定される「縄文海進」の時期に着目している.先行研究では,暖流である対馬海流が北海道東部まで到達していたことが推定されている.しかし,この時期の古環境変動に関する高時間分解能での研究が乏しく,十分に解明されていない.そこで,本研究では,連続的かつ高時間分解能で分析が可能な堆積物を用いて花粉・有孔虫の分析を行い、縄文海進の温暖な時期の陸域と海域における環境変動を詳細に復元することを目的としている.
本研究は,現在より温暖だったと推定される縄文海進の年代を含む汽水湖の堆積物で連続的な古環境復元を行い,先行研究(貝化石分析)で分かっている“縄文海進時に対馬海流が北海道東部に到達していた”ことについて微化石研究で検出することを目的としている.2022年度は,有孔虫試料については数点の分析を行い,有孔虫化石の有無を確認し,小さい個体ではあるが,堆積物中に残されていることを確認した.また,小さな個体を中心に電子顕微鏡を使用し,有孔虫の写真撮影を行った.さらに,花粉分析については,縄文海進時の年代を含む試料を分析し,陸域の古環境を復元することができた.当該年度は,道東地域において地域間比較のための追加試料となる約6メートルの堆積物コアを採取できた.2023年度は,北海道釧路市の春採湖の湖底堆積物について花粉分析を行い,現在から約9,500年前にかけての植生変遷を明らかにした.その結果について北海道道東地域の先行研究の結果と比較した.その結果,釧路市(春採湖)では,前期完新世にコナラ属コナラ亜属の増加が見られ,春採湖周辺にレフュジアが存在した可能性を示唆した.また,中期完新世のクルミ属が増加しており,温暖化による降雨・降雪の増加に伴う河川の氾濫原に先駆的に優占したことを示唆した.この結果は,今後周辺地域で分析を行うことでより詳細な解明に繋がるものであると考えられる.論文成果として,同内容について国内雑誌に投稿し,掲載された.また,数件の学会発表等も行うことができた.
All 2024 2023 2022
All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (6 results)
Laguna
Volume: 31 Issue: 0 Pages: 1-13
10.60290/laguna.31.0_1
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
Volume: 538 Pages: 173-178
10.1016/j.nimb.2023.02.015