無腸動物にユニークな共生関係の確立と維持機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2308
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Project/Area Number (Other) |
22J13892 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂上 登亮 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 光共生 / 珍無腸動物 / 緑藻類 / 無脊椎動物 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 電子顕微鏡 / bulk RNA-seq / in situ hybridization / 無腸動物 / 海産無脊椎動物 / 共生 |
Outline of Research at the Start |
無腸動物は体長数ミリ程度の海産性無脊椎動物であり,始原的な左右相称動物と考えられている。一部の無腸動物は孵化後の幼若期に外界から藻類を取り込み,動物外皮細胞層下の細胞間隙に共生させる(細胞間共生)。これはある種の無腸動物にのみ見られるユニークな共生様式であり,新たな共生概念が内在することが予想される。本研究では細胞間共生を示す日本固有の無腸動物Praesagittifera naikaiensisを用い,共生関係の確立過程,および関係維持のための分子機構を明らかにすることを目的とする。また他動物群との比較により,ミトコンドリアなどの細胞内共生といったの根源的な生物進化の機構解明も期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
共生成立過程の無腸動物Praesagittifera naikaiensisの(1)形態学的解析および(2)bulk RNA-seq解析を行った。 (1)P. naikaiensisは孵化後の幼若期に外界から緑藻類Tetraselmis sp.(以下,緑藻類)を体内に取り込む。P. naikaiensis幼若体(以下,幼若体)は緑藻類に反応し,摂食行動を示すことが分かった。緑藻類の自家蛍光を利用した共焦点レーザー顕微鏡観察から,幼若体体内における緑藻類の取り込み過程を三次元的にとらえることができた。電子顕微鏡観察から,感染前後の緑藻類の細胞構造の変化を明らかにした。 (2)幼若体において,感染直後には免疫やストレス応答関連遺伝子が,感染120時間後にはアミノ酸・糖代謝関連遺伝子の発現上昇が見られた。緑藻類による光合成産物はアミノ酸や糖の形で無腸動物に供給される。感染120時間後では,これら輸送を担う候補遺伝子の発現上昇が見られ,代謝産物の輸送が開始されている(共生関係が成立している)ことが示唆された。免疫やストレス応答関連遺伝子については幼若体の口周辺に,アミノ酸・糖代謝関連遺伝子については幼若体の全身に,陽性シグナルが確認された。 本研究で得た形態学的・分子生物学的知見は無腸動物の共生メカニズムを理解するために,極めて重要な基盤となる。一方,これまで緑藻類と共生関係を示す無腸動物において,その細胞構成や各細胞種特異的マーカーは未解明な部分が多いことから,候補遺伝子が発現する細胞種を特定することは容易ではなかった。今後は,共生成立過程における無腸動物のsingle-cell RNA-seq解析から細胞アトラスを構築し,共生に関与する細胞種を同定する必要がある。また緑藻類のゲノム配列が明らかになれば,宿主(無腸動物)だけでなく共生者(緑藻類)の遺伝子変動についても解析が可能となる。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)