Project/Area Number |
22KJ2484
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Project/Area Number (Other) |
22J21487 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 39050:Insect science-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
海老原 健 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | カイコ-バキュロウイルス発現系 / 組換えタンパク質生産 / 分泌不全 / 小胞体ストレス応答 / NGS解析 |
Outline of Research at the Start |
カイコ-バキュロウイルス発現系は高品質な組換えタンパク質大量生産系であるが、一部のタンパク質分子種は分泌不全や不溶化などが原因で低コスト生産が困難である。本研究では、過剰に発現・蓄積したタンパク質の品質管理機構である小胞体ストレス応答に着目し、組換えタンパク質の成熟化における分泌不全の改善を試みる。高分泌性および低分泌性の組換えタンパク質発現時の細胞内動態を比較し、分泌不全時に特異的な遺伝子発現変動やタンパク質相互作用を明らかにする。さらに、組換えタンパク質の難生産の原因となる遺伝子を同定し、組換えタンパク質発現システムの改変を進める。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、NGS解析を用いた分泌不全時に特異的に発現変動する小胞体ストレス応答関連遺伝子の選抜を実施した。また、小胞体ストレス応答を検出するレポーター細胞株を用いて、昨年度の結果から得た、バキュロウイルス感染時にカイコの小胞体ストレス応答が阻害されている可能性を検証した。 まず、組換えタンパク質の不溶化を主要因とするタンパク質の蓄積がより顕著に観察される感染36時間の遺伝子発現データをRNA-seq解析により取得した。高分泌性のマウスIL-1αと低分泌性のヒトIL-1αおよび分泌量が段階的に異なる3種類のキメラIL-1α発現時の遺伝子発現データを比較し、低生産性組換えタンパク質発現時に特異的に発現変動する遺伝子の同定を試みた。しかし、バキュロウイルス感染による宿主の遺伝子発現変動の影響が大きく、目的の発現変動遺伝子の同定には至らなかった。そこで、組換えタンパク質をプラスミドで一過性発現させ、低分泌性組換えタンパク質発現時に特異的に発現変動する遺伝子の探索を行なった。その結果、遺伝子発現の変動は少なかったが、組換えタンパク質の分泌量に相関して発現変動していると予測される8つの小胞体ストレス応答関連遺伝子を選抜することに成功した。さらに、これらの候補遺伝子は、バキュロウイルス感染時に発現が抑制されていることが明らかになった。 また、小胞体ストレス応答を検出するレポーター細胞株を用いた実験では、プラスミドによる低生産性組換えタンパク質の一過性発現で小胞体ストレス応答を強く誘導していた。その一方で、バキュロウイルスによる発現では小胞体ストレス応答が誘導されず、バキュロウイルス感染が小胞体ストレス応答カスケードを阻害している可能性がより確かになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カイコ培養細胞において、バキュロウイルス非感染下の低分泌性タンパク質発現時に特異的に発現上昇する小胞体ストレス応答関連遺伝子を選抜することができた。しかしながら、本年度に予定していた、候補遺伝子のRNAiによる機能阻害や過剰発現が、組換えタンパク質の分泌性に与える影響を検証することは達成できなかったため、やや遅れているという区分を選択した。 その一方で、選抜した候補遺伝子の発現およびカイコ小胞体ストレス応答が、バキュロウイルス感染時に抑制されていることが示唆された。この結果から、カイコ小胞体ストレス応答を生物工学的に制御することが、カイコ-バキュロウイルス発現系における組換えタンパク質の生産性を向上させる有力なアプローチであると期待でき、本研究課題は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
低生産性組換えタンパク質の生産性を向上させる候補遺伝子の解析を進める。具体的には、カイコ培養細胞で、組換えタンパク質の分泌量に相関して発現が変動していると予測された8つの小胞体ストレス応答関連遺伝子をRNAiによる機能阻害やプラスミドで一過性発現させ、組換えタンパク質の生産性が向上するかを検証する。生産性向上に効果があった遺伝子については、初年度にすでに確立した遺伝子編集技術を用いてバキュロウイルスのゲノム上に組み込み、カイコ-バキュロウイルス発現系の改変を進める。 また、バキュロウイルスがカイコ小胞体ストレス応答を阻害している場合、その原因を解消することで、低生産性組換えタンパク質の分泌量の向上が期待できる。そこで、バキュロウイルス感染下におけるカイコ小胞体ストレス応答カスケードの阻害点を詳細に解析する。そして、バキュロウイルスもしくはカイコの遺伝子編集により、バキュロウイルス感染下でも小胞体ストレス応答が活性化されるタンパク質発現システムの構築に挑戦する。
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