Project/Area Number |
22KJ2485
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Project/Area Number (Other) |
22J21920 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大日方 初良 (2023) 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Research Fellow |
大日方 初良 (2022) 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 軌道流 / スピン流 / 軌道ホール効果 / スピントルク強磁性共鳴 / スピン波 / 渦電流 / 動的熱スピン注入 / パラメトリック / 強磁性共鳴発熱効果 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、スピン系とフォノン系の相互作用を詳細に解明することによって、効果的な熱スピン制御技術、更には革新的スピンカロリトロニクスデバイスの実現を目指す。申請者が確立した動的熱スピン注入の評価手法を用いて、高効率動的熱スピン注入の設計指針を獲得し、これをもとに、動的熱スピン注入による磁化反転の高速化及び、温度変調効率の極めて大きなスピンカロリトロニクス素子の実現を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度における研究実績は以下の4点となる。①前年度から進めていた低磁場側での高周波電流による加熱効果及びスピン波励起現象による動的スピン注入現象を明らかにした。動的スピン注入現象はいままで強磁性共鳴が必要であり、励起に高磁場を必要としていたが、高周波電流による加熱効果及び低磁場側でのスピン波励起を用いることで非共鳴時においてもスピン流を生成可能であることを明らかにした。本結果は論文として出版済みである。②前年度より調査を行っていたパラメトリック励起したスピン波によるスピン注入現象の起源を明らかにした。起源の候補としてスピン波によるスピンポンピングとパラメトリック励起時の発熱による熱スピン注入の二点があったが、独自の測定手法及び構造を用いることで熱スピン注入の寄与が極めて大きいことを明らかにした。本結果に関しては、論文執筆中である。③スピントルク強磁性共鳴法(ST-FMR)を用いた電流―スピン流変換効率(スピンホール角)の算出における渦電流の影響を明らかにした。スピンホール角を調査する手法として有効とされているST-FMRだが、印加する高周波電流による渦電流がスピンホール角の見積もりにきわめて大きな影響を与えてしまうことを明らかにした。本結果は論文投稿中である。④FMRによって生成される軌道流を重金属の逆軌道ホール効果を介して検出することに成功した。近年、軽金属における逆軌道ホール効果の観測が報告されていたが、重金属ではスピン流と軌道流の寄与が複雑に絡み合うことから観測がなされていなかった。そこで、スピン流を排除し、軌道流のみを重金属へと注入することで逆軌道ホール効果の観測に成功した。本結果は論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた研究計画は、主にパラメトリック励起による動的スピン注入現象の原理解明、低磁場側での動的スピン注入現象の解明の二点であり、どちらも達成できた。特に、パラメトリック励起に必要な均一かつ高強度の高周波磁場を印加するための素子構造の探索が必要であったが、高性能なシミュレーションPCを用いて渦電流の素子構造依存性を明らかにした。また、発展的な研究計画としていたYBCO薄膜の成膜においては、超伝導転移の確認まで進んだ。本年度では以上の計画の進展が良かったことから、追加で軌道流の生成及び検出に関する研究を実施した。強磁性共鳴を用いた動的スピン注入現象では今までスピン流の生成しか考慮されていなかったが独自の素子構造及び測定手法を用いることで軌道流の生成及び検出に成功した。特に、スピン流生成効率が低く、軌道流の生成効率の大きいと予測されていた軽金属での軌道流生成及び検出はすでに報告されていたのに対し、重金属においてはその報告がされていなかった。これは重金属では軌道流に加え、スピン流の生成効率が大きく、スピン流と軌道流の分離が困難であった点が考えられる。そこで申請者はスピン流と軌道流を分離可能な構造と測定手法によりPt、W、Taといった重金属に軌道流を注入し、逆軌道ホール効果の検出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は磁化ダイナミクスに起因した発熱を最適化し、巨大な熱スピン注入を実現することである。ここで、この過程として熱と密接に関連していると期待されているフォノン角運動量の調査も挑戦的な目標として掲げていた。挑戦的な目標ではあったが、昨年度からフォノンとの関連性が指摘されている軌道流の検出が可能となったため、発熱及び動的熱スピン注入のより詳細な解明に向けて、残りの期間では軌道流の特性評価を行う予定である。特に軌道流と熱の関連性について調査を行う。研究計画は以下のとおりである。①TiやCuといった軽金属に強磁性共鳴を用いて軌道流を注入し、逆軌道ホール効果を検出することによってその軌道流-電流変換効率及び拡散長の評価を行う。②従来、超伝導体はスピン流に対し絶縁体として知られていたが、軌道流に対しての振舞いは調査されていない。そこで、S波超伝導体であるNbやVといった超伝導体への軌道流注入を試みる。さらに、発展的な内容として超伝導体の渦糸を利用した軌道流の生成及び検出に関する調査を行う。ここで、良質なYBCO薄膜の作成も行い、可能であればd波超伝導体であるYBCOにおいても同様の実験を行う。③強磁性共鳴を介して生成された軌道流の生成メカニズムにおいて熱の寄与があるかを調査する。ここで、熱伝導の非対称性を付加した素子構造において測定を行うことで熱の寄与の有無を判別する。
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