Project/Area Number |
22KJ2563
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Project/Area Number (Other) |
22J00135 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
井戸川 直人 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 社会性昆虫 / 寄生 / 分業 / 齢分業 / 社会寄生 / ケアリ |
Outline of Research at the Start |
生物の社会には、個体の年齢に応じた役割分担システム(齢分業)が広くみられる。本研究の目的は、個体発生における齢分業の発現タイミングの遅れが、社会における寄生戦略を進化させたという仮説を検証することである。そのための実験系としてアリに着目し、寄生者と宿主の長期にわたる行動解析を行なうことで、両者の若齢から老齢にかけての行動の発現パターンを比較する。また、代謝ストレス解析や組織学的観察により、寄生者が宿主に負わせる生理的コストを評価する。さらに、寄生者と宿主の加齢に伴う遺伝子発現パターンの推移を調べ、共通の祖先から両者が分岐した遺伝的基盤を探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、個体発生における齢分業の発現タイミングの遅れが、社会における寄生戦略を進化させたという仮説を検証することである。本年度は、個体の齢分業と老化の間系に着目し、寄生者アメイロケアリの齢分業開始時期の遅れが宿主トビイロケアリの老化を早めるというという予測を検証した。しかし通常のコロニーと寄生されたコロニーにおいて、トビイロケアリの働きアリの体重や体脂肪率に有意な差はなく、アメイロケアリの存在下でトビイロケアリが強い生理的ストレスを受けることは支持されなかった。 一方で、アメイロケアリの存在下ではトビイロケアリの巣仲間識別パターンが変化することが明らかになった。通常、トビイロケアリの働きアリは、同種の異巣個体やアメイロケアリの働きアリに対して噛みつきなどの敵対的な行動を示す。しかし寄生されたトビイロケアリは、アメイロケアリのみならず同種の異巣個体に対しても敵対性を失っていた。この結果はアメイロケアリが宿主の認知を改変していることを示唆しており、寄生戦略の進化のみならずアリ類の巣仲間識別メカニズムのより深い理解にも寄与しうる。第71回日本生態学会大会にてこの結果を発表した。 この現象のさらなる理解のため、アリの巣仲間識別パターンと密接に関与すると考えられるフェロモンの解析にも着手している。ガスクロマトグラフィーを用いて、寄生者アメイロケアリと宿主トビイロケアリの体表ワックス成分の組成データを得た。次年度に詳細な分析を行ない、寄生者の体表ワックス成分の特徴や、寄生された宿主のワックス成分組成の変化を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画に加えて、2023年10月から2024年1月にかけては、ドイツのMax Planck Institute for Chemical Ecologyに滞在し、Yuko Ulrich氏のもとで共同研究を行なった。アリに寄生するDiploscapter属の線虫が、宿主働きアリを介した社会的相互作用によって、直接には寄生されていない幼虫の発生速度を遅らせることを明らかにした。 また、研究計画を実施するなかで、社会寄生に関与すると考えられる未記載のアリの発見という予想外の成果が得られた。現在は詳細な形態計測を行ない、記載論文を執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主であるトビイロケアリについて行なった生理状態の評価を、寄生者アメイロケアリにおいても行なう。また、アメイロケアリが宿主の認知を改変している可能性が見いだされたため、コロニー内におけるトビイロケアリとアメイロケアリの栄養交換やグルーミングの方向性に偏りがないか検証する。さらにその具体的なメカニズムとして寄生者の体表ワックス成分である体表炭化水素に着目し、化学生態学的な分析を予定している。 なお、研究計画の過程で発見された社会寄生に関与すると考えられる未記載のアリについても、系統解析や生活史の解明を進める。
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