強相関トポロジカル絶縁体における表面効果と圧力スイッチング効果
Project/Area Number |
22KJ2630
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Project/Area Number (Other) |
22J15100 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉田 章吾 兵庫県立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | トポロジカル近藤絶縁体 / 強相関電子系 / 磁性 / サマリウム |
Outline of Research at the Start |
本研究では、トポロジカル近藤絶縁体(TKI)候補物質であるSmB6とSmSにおいて、核磁気共鳴(NMR)測定を用いてTKI特性を探索する。当該年度は、新たに33S濃縮のSmS単結晶試料を作製し、高圧下での電子状態の理解に重要な格子変化について明らかにする。また、フェルミ準位近傍の状態密度を反映する核スピン-格子緩和時間(T1)とナイトシフトの印加磁場の異方性を測定することで半導体領域のバンド構造を詳細に調べる。SmB6においては薄膜試料のNMR測定に挑戦し、表面状態に期待されるTKI特性の抽出とその定量化を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
<研究①> 高圧下SmSは、圧力印加にともない常磁性半導体から反強磁性金属へと転移する。半導体領域はトポロジカル絶縁体特性が現れると予想されている。まず、高圧下SmSのバルクの電子状態を解明するために、磁化測定用対向アンビル型圧力容器を用いて、最大2.6 GPaまでの直流帯磁率測定に初めて成功した。圧力誘起非磁性-磁性転移の臨界圧力1.9 GPa以上の圧力下においても、低温でCurie的な帯磁率の増大は確認できず、SmSはSm-f電子の局在性を示す実験証拠が全く得られない状況で磁気秩序を示す、ランタノイド化合物では極めて希な物質であることが分かった。 次に、トポロジカル絶縁体相が期待される圧力である1.5 GPaにおいて、核スピン-格子緩和時間(T1)の詳細な測定と解析を行った。低温ではT1に複数の成分が観測されたが、最小二乗法では詳細な解析が困難であったため、測定値の成分分離に長けたベイズ推定の手法を核磁気緩和曲線の解析に初めて導入した。常圧下SmSにおける核磁気緩和曲線を対象として解析手法の評価を行うことで適切な解析手法を構築した。この手法を用いることで1.5 GPaにおける1/T1とその分布の温度依存性を得ることができ、低温で小さなギャップが形成され、同時にT1に連続的な分布が生じることを明らかにした。 高圧下SmSのNMRスペクトルは1つのlorentzianでフィットできず、2つのlorentzianの足し合わせの形状が観測されていた。微細な構造を調べるために行ったNMRスペクトルの磁場依存性から、高圧下SmSの格子の異常を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<研究①> SmSについては、今年度の達成事項の1つである高圧下における直流帯磁率測定を完了した。半導体領域(トポロジカル絶縁体相)における核スピンー格子緩和率(1/T1)の温度依存性測定を完了し、その結果と理論モデルの比較からSmSの系に則した状態密度モデルを議論している段階である。半導体領域の1/T1の測定および解析は、緩和曲線に複数の成分が含まれることが分かり、解析に時間を要した。そのため、実験による1/T1の温度依存性と理論計算による状態密度モデルとの比較する段階への移行が遅れた。一方で、多成分を含む複雑なデータ解析の手法として、新しくベイズ推定法を導入したことは、トポロジカル絶縁体特性を含むことで複雑化すると予想されるデータの解析に有効である。 <研究②> トポロジカル近藤絶縁体候補物質のSmB6については、単結晶試料を用いた核スピンー格子緩和率(1/T1)の印加磁場依存性および印加磁場方向依存性の測定を行っている。これらの測定に用いる予定であった7Tスプリット型マグネットは納入が大幅に遅れ、またその立ち上げ作業にも予想以上の時間を要したため測定の進度が遅れた。 また、超格子の最初の試料は、当初の計画では2022年10月までに準備できる予定であったが、分子線エピタキシー法の条件出しに問題があり、2023年5月の準備完了に計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
<研究①> SmSについては、半導体領域における核スピンー格子緩和率(1/T1)から、フェルミ準位近傍の状態密度の構造とその温度変化を議論する。そのために、伝導電子とSm-f電子の相関効果を組み込んだ周期アンダーソンモデルによる状態密度の計算を武藤氏(島根大学)に依頼し、そのモデルから見積もられる1/T1の温度依存性と実験結果の比較を行う。 高圧下における格子の異常を確認するため、33S同位体置換した単結晶試料の作製を依頼する。試料ができ次第、常圧下と0.6GPa以上の圧力下でのNMRスペクトル測定を行い、スペクトルの詳細な構造から、格子の変化について議論する。 <研究②> SmB6単結晶試料の測定については、1/T1の印加磁場依存性および印加磁場方向依存性を優先して行い、完了する。超格子試料は、試料体積が小さいことから、NMR信号が微弱であることが予想される。そのため、初めは10~15Tの強磁場下におけるNMRを行い、測定条件の探索を行う。11B-NMR信号の観測に成功すれば、NMRスペクトルおよび1/T1の印加磁場依存性と印加磁場異方性測定に移る。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)