胎子期器官形成からひも解く哺乳類の喉頭・聴覚器共進化と音声多様化メカニズム
Project/Area Number |
22KJ2744
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Project/Area Number (Other) |
22J00127 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野尻 太郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 形態形成 / 舌骨 / 相同性 / 喉頭 / 気管 / コウモリ類 / エコーロケーション |
Outline of Research at the Start |
本研究は, 音声発信器 (喉頭)と音声受信器 (外耳・中耳・内耳)の共進化を検証し, 音声の多様性を創出した発生機構を検討することを目的とする. そこで音声に著しい機能的多様性がみられる哺乳類の有袋類・有胎盤類の胎子期発生に着目し, 次の3点の問題解決を行う. 問題①発信器と受信器の発生は共変しているのか, または独立に変化しているのか (発信・受信器の共進化の検証). 問題②音声差は, 器官のどのような発生変異により生じるのか (音声差を生み出すヘテロクロニーの特定). 問題③音声差をもたらしたヘテロクロニーは, どのような遺伝子変異により生じるのか (音声の多様化を促した発生機構の検討).
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Outline of Annual Research Achievements |
初年度は哺乳類の大規模発生比較の一環として、コウモリ類の喉頭を対象に、連続組織切片による軟骨・筋・神経の形態形成過程の復元を行った。コウモリ類の中でも最も高い周波数のパルスを発信するキクガシラコウモリ類を対象に、胎子期初期から幼獣、成体までの包括的なステージを対象に、喉頭形態形成の記載およびマウスとの比較、パルス周波数の発達過程の記載を行った。キクガシラコウモリ類の気管には音声の周波数制御及び肺からの反響音をフィルタリングするための新奇形質である鳴胞tracheal chamberがみられ, 本研究では鳴胞が超音波発信に利用される輪状甲状筋と接続されていることを明らかにした。このことから、鳴胞での周波数制御が、輪状甲状筋及び前喉頭神経による支配を受けていることが示された。また、他の哺乳類と異なり、コウモリ類の輪状甲状筋を支配する神経、迷走神経の前喉頭神経が筋内で2分枝しており、それぞれ輪状甲状筋の吻側部・鳴胞に付着している腹側部を走行していることが判明した。これによって輪状甲状筋の拡大に伴い、鳴胞を獲得したキクガシラコウモリ類に新奇の神経支配パターンが構築されたことが示唆された。本研究は現在論文にまとめている最中である。また、これと並行して進めていたコウモリ類24種の四肢形成過程を他羊膜類72種のものと比較し、コウモリ類の進化に伴って四肢形成が長期化していることを定量的に実証し、国際誌および複数の国内学会にて発表した。コウモリ類は非飛翔性哺乳類と比較して伸長した指骨を獲得していることから、骨伸長のための四肢形成期間の確保を可能とする発生の進化的改変であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は哺乳類の中で音声の受信器官および発信器官がいかに共進化しているかを比較発生学的に明らかにするものである。申請者のこれまでの研究から、音声の受信器官である内耳の非モデル動物における発生パターンについては概ね明らかとなった。一方で、音声の発信器官である舌骨・喉頭・気管の形態形成は、マウスやヒトでの記録に限られており、コウモリ類をはじめとした非モデル動物でのパターンが未記載であった。初年度はこうした課題を受け、コウモリ類の舌骨・喉頭・気管の胎子期初期から幼獣、成体までの幅広い発生段階を対象としたマウスとの比較発生学的記載を行い、既に論文としてまとめた。このことから、本研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はコウモリ類から哺乳類全体へと解析対象を広げ、爬虫類から哺乳類・鳥類への移行に伴って舌骨・喉頭にどのような形態進化が生じたのか、それによってどのように利用する音声の多様性が創出されたのかを明らかにするべく、マウス、オオアシトガリネズミ、スッポン、ソメワケササクレヤモリ、ニワトリ、オカメインコの胚を利用して比較発生学的分析を推進する。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)