Project/Area Number |
22KJ2888
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Project/Area Number (Other) |
21J22262 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 昌平 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2021: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | ハイデガー / 存在論 / 形而上学 / 存在史的思索 / 存在 / 真理 / 黒ノート |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガー(1889-1976)の「黒ノート」と呼ばれる草稿群、特にそこでの反ユダヤ主義的言説の分析を目的としている。その際、ハイデガーが1936年から新たに構想しはじめた根本思想「存在史的思索」の解明を通して、ハイデガーの基本的思想と「黒ノート」との関連を明らかにする。こうした作業から、ハイデガーの「民族(Volk)」に関わる政治的思想が、彼の根本的な思想のいかなる必然性から成立するのかを明らかにする。それにより、哲学的言説が暗に孕まざるを得ない先入見、思想的偏りと、その原因を明らかにすることを目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハイデガーの「存在史的思索」および反ユダヤ的言説を含む「黒ノート」を分析し、思想が持つ偏向・差別を指し示すことにあった。この課題に「存在史的思索」の読解をとおして「思考」と「言語」の関係から着手した。 まず反ユダヤ人的言説について、二通りの両義性が存することを明らかにした。第一に、上記の言説がコンテクストのなかで持つ両義牲。当該の差別的批判は、一方でハイデガーの西洋哲学批判の動機の一つととれると同時に、反対に西洋哲学の帰結として生じた現象の分析とも解しうる。前者であれば積極的に差別に加担していることになるが、後者は必ずしもそうではない。この点は諸テクストを通して両義的にとどまる。 第二に、思考と言語の依存関係の両義性。思考は、それが表現されるさい、言語を用いざるをえない。黒ノートにおいては、当時喧伝されたイデオロギーおよびいわゆる民族的集団の名が挙げられ批判を被る。こうした表現・例示は一方で思想を説明するいわば補助具であり、その限りで思考にとり本質的ではないと取れる。しかし反対に、例こそが思想を哲学者の意図と無関係に構成する、とも解釈できる。存在史的思索は、まさにこうしたものへと思考を転換することをその企図としていた。 以上の思考と言語の両義的関係から、哲学者からの同時代への批判的思考に対向する形で、差別への批判的思考を向けることができる。思考とは言葉の裏にある「意図」ではない。むしろ言語の次元で、思想家・著者の意図を仮定せず、コンテクストを分析し批判することで「思考」は形成される。これをハイデガー自身は過去の哲学者に対し行なった。これは彼自身にも当てはまる。 すなわち、思想の表現如何は非本質的なものでなく、むしろ表現の個別性・有限性こそが思想の唯一性を成す。同時にこの有限性が必然的に含む差別性に対する批判を通した適切な表現・具体例への改訂が新たな思考の形成を可能にする。
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