Project/Area Number |
22KJ2910
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Project/Area Number (Other) |
22J01166 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 90030:Cognitive science-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
女川 亮司 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 運動意思決定 / リスク態度 / 認知バイアス / メタ認知 / 運動制御 / 運動計画 / 意思決定 |
Outline of Research at the Start |
近年、運動課題における人の意思決定の非最適性の存在が示されており、このような認知傾向はパフォーマンスの最大化を妨げる要因となる。本研究は、運動の意思決定を説明する諸要因を理解することで、意思決定の最適化を妨げる原因を探り、それを改善するための介入法を検討する。具体的には、「運動パフォーマンス推定」「価値認識」の要素を統合した新しい運動意思決定モデルを開発し、このモデルに則って①運動意思決定の個性の定量化②モデルの一般化可能性の検証③モデルの学習支援への有効性検証を行うことで、認知バイアスの機序の特定と、学習支援法の確立を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度より実施している運動パフォーマンスの確率的な認識に関する研究を進展させた。本研究では、反応課題を数十試行おこない、各試行で反応時間のフィードバックを受けた後に、反応時間の分布を参加者に推定させた。結果として、人は反応時間の表現において、実際の分布よりも広い分布を表現する傾向があることが示唆された。このバイアスは、確率の低い事象を過大評価し、確率の高い事象を過小評価するという、確率知覚における偏在的なバイアスと一致する。この確率表象バイアスは、自分の報酬率を最大化する行動を選択することを困難にする可能性があることを明らかにした。本研究の成果を国際誌(Quarterly Journal of Experimental Psychology)に採択された。 また、昨年度に引き続き、運動場面の意思決定におけるリスク態度の主観評価と客観評価の間の差異について検討した。具体的には、先行研究で示されてきた運動場面でのリスク志向バイアスがリスクを取ろうとする主観的な態度によるものか検討した。結果として、5つの異なる運動課題や得点設定の下で一貫して、客観的なリスク態度と主観的なリスク態度がよく一致し、自由に選択する場面では、リスクを主観的にとろうとした結果として客観的なリスク志向バイアスが存在することが示された。これらの結果から、人がリスク態度に関して平均的には最適な計算をできるものの、戦略的選好によってリスク志向バイアスが生じる可能性が考えられた。加えて、リスク志向バイアスの背景にMaximax方略の選好が関連していることを、2つの追加実験により明らかにした。さらに、リスク志向バイアスの程度の個人差を説明する要因として、リスク態度の主観評価と客観評価のずれが存在していることも明らかになった。現在国際誌に投稿する準備を進めており、次年度内の採択を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度より実施している研究を国際誌(Quarterly Journal of Experimental Psychology)に投稿し無事採択された。加えて、昨年度から継続している、運動場面の意思決定におけるリスク態度の主観評価と客観評価の間の差異について検討を進展させた。この研究成果は、本年度においてコンスタントに対外的な研究発表を行い、Motor control研究会、日本スポーツ心理学会、日本認知科学会P&P研究分科会、日本基礎心理学会などのさまざまな研究領域の学会・研究会にて発表賞を受賞するなどの研究成果を得た。また、その研究の進展の中で、申請時に計画していた、運動意思決定における認知バイアスの機序の分類に成功し、その個人差に基づく介入法の提案につなげるための足掛かりとなる知見を得た。次年度に個人差に基づく介入法の実現可能性を検証することにより、本研究の申請時に計画していた研究の大筋が完成することとなる。 さらには、本年度に運動適応パラダイムのweb実験系の構築が完了した。このパラダイムを用いることで成功や失敗に対する行動の変容を実験的に操作しつつ計測することができるようになり、過去の結果からの行動変容からバイアスの原因を明らかにできる可能性がある。この試みは、申請時には計画のしていなかったより詳細なバイアスの原因の解明にもつながる可能性を持っている。 以上の研究の進展を踏まえて、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、運動場面でのリスク志向バイアスの原因に個人差が存在することが明らかとなった。この結果は、見た目上は同じ認知バイアスの背景に、個人毎に異なる機序が働いていることを示唆している。そのため、バイアスの改善のために、個人毎に合った介入法が存在する可能性が考えられる。次年度では、個人差を考慮した介入によりバイアスの効果的な改善が実現できるかを検証したいと考えている。この試みは、数理モデルを用いた個人差の定量化と、その情報に基づく行動変容の実践を実現するという意味で、学術的かつ応用的価値が高いと考えている。 また、次年度はリスク志向バイアスの個人差を説明する要因をより詳細に理解するための実験を実施する予定である。同じ行動がとられたとしても、その背景機序にはさまざまな要因が考えられる。そのため、要因を細かく分類・分解していくことにより、さらに精度の良い介入法の提案につながる可能性がある。 また本年度には、視覚回転外乱を用いた運動適応パラダイムのweb実験系の構築を進め、このパラダイムを用いてデータを問題なく取得できることを確認した。この運動適応パラダイムを用いることで、成功や失敗に対する行動の変容を実験的に操作しつつ計測することができる。次年度は、この運動適応パラダイムを用いて、運動場面の意思決定におけるリスク志向バイアスが生じている背景を、より精緻に理解したいと考えている。
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