白色矮星に降着する惑星残骸物質から解き明かす中質量星周りの惑星系形成
Project/Area Number |
22KJ3094
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Project/Area Number (Other) |
22J00632 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
奥谷 彩香 国立天文台, 科学研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 惑星組成 / 白色矮星の重元素 / デブリ円盤 / 赤外スペクトル / 降着円盤 |
Outline of Research at the Start |
中心星の違いが惑星形成に与える影響を解明することは重要である。しかし、太陽より重い星周りにおける惑星の観測は困難でありその影響は明らかでない。本研究では太陽より重い星が起源である白色矮星の約半数が、惑星が存在した痕跡(星大気中の重元素および星周円盤)を示すという観測に注目し、そこから惑星形成過程を復元する方法論を開拓する。具体的には降着円盤モデルを構築し、重元素観測からその起源である小惑星の岩石/氷比・鉱物組成・質量を制約する。さらに、小惑星が形成されて星へ降着するまでの力学・化学進化を理論計算より追跡し、上記の情報より小惑星及び近傍に存在する惑星の空間分布・形成過程・衝突史までを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
白色矮星大気では降着天体が元素レベルに分解された形で観測される一方で、その周りの円盤を構成するダストは固体物質(鉱物や金属)組成そのものを探る手がかりとなる。本年度はダスト円盤からの熱放射スペクトルが、固体物質組成の制約にどの程度有用であるかを調べた。具体的には、これまでに得られている白色矮星周りのダスト円盤の赤外スペクトルを、さまざまな組成についてのダストの円盤放射モデルと比較した。特に、白色矮星G29-38の円盤について、近赤外波長域の放射とシリケイトフィーチャーに着目すると、シリケイトダストが金属鉄を含む場合に観測スペクトルが再現され、かつ白色矮星大気で測定された元素組成と整合的であることを明らかにした。他の白色矮星周りの円盤についても同様の解析を実施し、その成果をまとめて国際誌への投稿論文を執筆中である(Okuya et al. in prep.)。 また、上記の発見の肝である、金属鉄のように導電性の高いダストの吸収係数についての解析式も導出した。AGB星周りのダストや原始惑星系円盤などの天体においても、白色矮星周りのダスト円盤と同様に金属鉄や炭素などの物質が近赤外放射の由来だと指摘されている。本研究で作成した解析式は、白色矮星周りのダストに限らず、そのような天体の放射スペクトルの解析にも広く応用できる可能性がある。本成果も論文としてまとめる予定である。 さらに、上述の円盤放射モデルを利用して、白色矮星周りの水氷円盤のスペクトルについても計算した。水氷円盤は氷天体降着の観測的な証拠になりうる。シリケイトダスト円盤よりも水氷円盤は低温であるため、遠赤外波長のフィーチャーが検出に有用であることがわかった。さらに、2030年代に稼働予定の遠赤外宇宙望遠鏡の分光装置の性能を想定し、水氷円盤の質量と地球から系までの距離を関数として、検出可能性の定量的な評価に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していたダスト円盤の放射を用いた組成制約について、予想以上の成果を上げることができた。円盤スペクトルおよび星大気の元素組成に基づいて円盤ダスト中の金属鉄の存在を明らかにした発見は世界初である。この発見を複数の国際学会で発表し、観測家から大きな反響を得ている。本成果を論文としてまとめ、国際誌への投稿を急ぐ。また、金属鉄含む導体ダストの吸収係数についての解析式も導出した。これにより、導体的な振る舞いを示す様々な組成のダストについて、効率的なスペクトル解析が可能になると期待する。さらに、白色矮星周りの水氷円盤の検出可能性についての初期成果も得つつあり、これをもとに遠赤外線天文学の将来サイエンス検討会での招待講演を行なった。これをきっかけに、今後も検討会への参加を継続予定であり、将来宇宙望遠鏡による観測との連携を目指す。 一方で、昨年度より行っている白色矮星周りのガス円盤の散逸・観測可能性について今年度は進捗が得られなかった。これはダスト円盤と比較して現状での観測数が少なく、理論研究の方針が立てにくいためである。今後は観測の現状を整理して、ガス円盤に関して取り組むべき問題を再考する。
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Strategy for Future Research Activity |
赤外宇宙望遠鏡JWSTによる観測の進展を考慮し、研究計画を遂行する。 白色矮星周りのダスト円盤については、JWSTによるサーベイが進行中であり観測数が大幅に増えることが見込まれるため、予定通り計画を進める。今回得られた成果をもとに、異なる元素種や固体物質の制約可能性についても調べることで、より多様な固体物質の組成推定が可能になることが期待できる。一方、ガス円盤については可能な範囲で計画を進めつつ、ダスト円盤を用いた水氷の検出など代替案も模索していく。 また、本年度、史上初となる木星サイズの惑星候補が白色矮星周りに複数発見された。このような惑星は、重元素の起源である小惑星を散乱させて白色矮星近傍へと供給している可能性がある。白色矮星近傍の重元素観測とその起源となった惑星系を結びつけるにあたって、この観測を重視しつつ当初の研究計画の最終ステップを推進する。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)