寄生植物-宿主間と植物-菌根菌間における他者認識の分子機構
Project/Area Number |
22KJ3127
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Project/Area Number (Other) |
21J00718 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38060:Applied molecular and cellular biology-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 哲史 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 寄生植物 / 屈性 / ストリゴラクトン / 菌根菌共生 / KAI2 |
Outline of Research at the Start |
植物はどのように根圏で他者を認識し、栄養を獲得しているのか? 植物は菌根菌と共生し土壌から栄養を吸収する。一方寄生植物は宿主植物へと寄生することで栄養を確保する。先行研究および自身のこれまでの研究から、私は寄生メカニズムが既存の共生メカニズムを転用したものであるという仮説を立てた。 そこで本研究では、寄生植物の宿主認識と植物の菌根菌認識の共通点を分子レベルで明らかにする。菌根菌との共生を制御すると考えられている未知の植物内生物質に着目し、共生への関与を明らかにすることで、共生における菌根菌認識と寄生における宿主認識に共通する分子メカニズムを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
植物は周囲の他者を認識し共生関係や寄生関係を築くことで、栄養確保に役立てている。本研究では植物における菌根菌の認識と寄生植物における宿主植物の認識に共通する分子機構の解明を試みている。まず寄生植物が宿主を認識し接近する屈性のメカニズムを、主にハマウツボ科のコシオガマおよびストライガを用いて解明してきた。昨年度までに、宿主由来のストリゴラクトン(SL)がコシオガマ並びにストライガの屈性を誘導すること、SLはコシオガマの根において植物ホルモンのオーキシンに対する応答を左右非対称に引き起こし屈性を誘導すること、その応答はアンモニウムイオンにより阻害されることを発見した。本年度はさらに、コシオガマやストライガがSLに対して特異的に屈性を示すことを明らかにした。また、イネにおいて菌根菌との共生を負に制御するタンパク質のホモログがコシオガマに存在することに着目し、そのタンパク質が屈性を抑制していることを発見した。これにより、寄生植物におけるSLへの屈性は菌根菌と共生するためのシステムから改変された戦略である可能性を提唱した。 本年度はさらに、植物の菌根菌認識の分子機構を解明するため、菌根菌との共生に必要なKAI2 ligand (KL) という未知の植物内生物質に着目し研究を進めた。KLの生合成遺伝子を決定するため、カリフォルニア大学リバーサイド校のNelson教授の研究室に滞在し、KLを過剰蓄積していると考えられるシロイヌナズナの株に変異原を処理した種子をスクリーニングした。その結果、約56,000個の種子よりKLの蓄積が損なわれたと考えられる表現型を示す植物体を38株得た。今後はこれらの株を全ゲノムシークエンシング解析に供し、KLの生合成遺伝子の候補を絞り込んで解析を進める。メタボローム解析や受容体との結合能の測定により、KL生合成遺伝子およびKLの化学構造を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究通り、ハマウツボ科寄生植物における宿主発見のための分子メカニズムの解明を行なった後、カリフォルニア大学リバーサイド校のDavid Nelson教授の研究室に滞在し植物が菌根菌を認識するメカニズムの解明を進めた。Nelson教授らが作成したKLを過剰蓄積していると考えられるシロイヌナズナをもとに、変異原により遺伝子変異を導入したライブラリーについてスクリーニングを進め、KLの蓄積が欠失したと考えられる変異株の選抜をおおむね完了させた。既に全ゲノムシークエンシングによるKL生合成遺伝子の候補の選抜を開始しており、おおむね当初の計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初に提唱した「寄生植物は進化の過程でKL受容体をSL受容体に改変し、既存の共生メカニズムを寄生に転用するための新たなSLの生理機能を獲得した」という仮説を検証するため、最終年度はKLの生合成遺伝子の同定およびKLの化学構造の同定を試みるとともに、菌根菌共生におけるKLの役割を調べる。KL生合成遺伝子の候補について、野生型株をもとに遺伝子欠損株および相補株を作成し、胚軸長などの表現型を観察する。これによりKL生合成への寄与の有無を調べ、KL生合成遺伝子を同定する。得られたKL生合成遺伝子欠損株について、野生型株およびKLを過剰蓄積していると考えられる変異体kuf1(Nelson教授らが作成)とメタボローム比較を行い、蓄積量に差が見られる代謝物を同定する。得られた代謝物について、シロイヌナズナへの処理によりKL蓄積と同等の表現型が得られるかを調べるとともに化学構造を決定し、KLを同定する。さらに、イネにおいてKLが菌根菌の共生に与える影響を解析する。以上の解析により得られた結果をもとに、「植物におけるKLの認識から菌根菌共生に至るまでのメカニズム」と「寄生植物におけるSLの認識から宿主への寄生に至るまでのメカニズム」を比較することで、両者に共通する分子機構を明らかにする。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Strigolactones are chemoattractants for host tropism in Orobanchaceae parasitic plants2022
Author(s)
Ogawa, S., Cui, S., White, A. R. F., Nelson, D. C., Yoshida, S., Shirasu, K.
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Journal Title
DOI
Related Report
Open Access / Int'l Joint Research
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