Project/Area Number |
22KJ3139
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Project/Area Number (Other) |
22J00328 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢木 智章 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 学振特別研究員PD (90968281)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 一分子FRET / 液液相平衡 / 密度ゆらぎ / Langevin方程式 / 化学Langevin方程式 / グランドポテンシャル / 自由エネルギー地形 / 遷移経路時間 / 溶媒和理論 / 密度汎関数理論 / 積分方程式理論 / Ornstein-Zernike方程式 / グランドポテンシャル汎関数 |
Outline of Research at the Start |
近年の一分子分光計測や超解像度イメージング技術の進展により、タンパク質溶液や細胞組織などの複雑分子系の情報を含んだ有用な実験データが急速に蓄積されてきている。急速なデータの蓄積にもかかわらず、その背後に隠れている個々の分子や分子集合体の動態を抽出する方法の開発は未解決の課題である。本研究では、一分子FRET計測および蛍光イメージングの実験データの情報から、確率過程の物理モデルに立脚して生体高分子の構造動態やその離合集散の動態を統計的に推定する方法の開発に取り組む。またこれらの動態において媒質である溶媒の意義について分子論的に考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
生体高分子に標識した色素分子から得られる蛍光光子の時系列データは、溶液内における生体高分子の構造ダイナミクスや分子間相互作用に関する多くの情報を含んでいる。本年度はこれらの情報を最大限に引き出すための方法の開発として蛍光光子時系列データのベイズ統計モデリングに関する2つのテーマに取り組んだ。 1. 1分子FRETデータのベイズ統計モデリング:生体高分子に標識した色素分子間の距離についてのLangevin方程式に基づいて一分子FRETデータのベイズ統計モデリングを行った。このモデリングとEMアルゴリズムを用いて、色素間距離の時系列及び色素間距離に沿った自由エネルギー曲線と摩擦係数を推定する方法の開発を行った。シミュレーションを用いて生成した模擬的な1分子FRETデータに本手法を適用して得られた推定の結果を元のモデルやデータと比較することでその妥当性を確認した。さらに実際の実験データへの有用性を確認するために、DNAホリデイジャンクションの1分子FRETの公開データに対して本手法を適用した。またこの解析方法を用いて生体高分子の構造遷移過程を特徴づける遷移経路時間の推定が可能であることを示した。 2. 蛍光強度ゆらぎのベイズ統計モデリング:生体高分子の密度ゆらぎについての化学Langevin方程式に基づいて蛍光強度時系列データのベイズ統計モデリングを行った。テーマ1と同様の方法で、密度ゆらぎの時系列及び密度についてのグランドポテンシャル曲面と拡散係数を推定する方法を開発した。液液相平衡を示す二成分系のモデルについてのシミュレーションにより生成した蛍光データに対して本手法を適用し、相平衡状態であることを表す双安定なグランドポテンシャル曲面を推定できることを示した。また、溶液系の統計熱力学に基づいて、推定したグランドポテンシャル曲面の形状から分子間相互作用を解析する方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初の狙いは統計熱力学に立脚して溶媒和の溶質分子に対する作用・機能を明らかにすることであったが、研究途中で溶質分子そのものを調べる方法論を開発することの重要性が高まった。そこで特に溶質分子として生体高分子を調べることに重点を置き、その構造ダイナミクスや分子間相互作用を蛍光光子の時系列データから抽出する方法の開発に取り組むように計画をシフトした。 1分子FRETデータのベイズ統計モデリングでは、シミュレーションによる模擬データと実験データへの適用でその妥当性と有用性が確認できた。特にこの方法によって、これまで1分子FRETデータから直接解析することが困難であった遷移時間経路を推定できるようになった。これらの成果については学会発表を行っており、現在は論文投稿の準備段階にある。蛍光強度ゆらぎのベイズ統計モデリングについては、シミュレーションによる検証で分子間相互作用や液液相平衡の解析の可能性を示した。現在は、実際の実験データへの適用にむけてモデルの改良を進めている。 開発した方法によって、生体高分子の構造ダイナミクスや分子間相互作用の溶媒依存性の解析についても展望が開けた。当初の目標を鑑みても本研究課題は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
一分子FRETデータのベイズ統計モデリングは概ね完成した。一方でここまで開発してきたの蛍光強度ゆらぎのベイズ統計モデリングについては、系が均一であるという理想的な実験条件を仮定しているので、不均一性を考慮したより現実的な条件をモデルの中に組み込む必要がある。また蛍光光子データには溶液内における生体高分子に関する多くの情報を含んでいるが、それでもなお分子レベルでの詳細に関しては得られる情報は限定的である。今後は、これまで開発してきた蛍光光子データのベイズ統計モデリングのさらなる可能性を探るため分子シミュレーションとの融合を検討する。
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