歯の喪失および軟食が視床下部の老化に及ぼす影響~自然加齢マウスによる解析~
Project/Area Number |
22KJ3207
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Project/Area Number (Other) |
21J40002 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 57050:Prosthodontics-related
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
古川 匡恵 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 口腔疾患研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 咀嚼 / オーラルフレイル / 軟食 / 海馬 / 視床下部 / 老化 / astrogliosis / 抜歯 |
Outline of Research at the Start |
咀嚼能力は、授乳期から幼児期を通して獲得され日々の学習により発達させていくことが必要な食物摂取機能のひとつである。咀嚼は消化吸収を助ける重要な働きであるとともに、食欲や脳機能の発達にも関与しているため、乳児期から咀嚼機能を高めることは極めて重要な課題である。本研究では、長期間の軟食飼育や歯の喪失が脳へ及ぼす影響を検討するとともに、歯を喪失したマウスにおける三叉神経の活性化の程度を解析し、脳の老化と咀嚼の関係性を明らかにする。さらに、化合物による三叉神経賦活が脳老化や脳機能低下の抑制や回復に有効かを検討する。これらの結果を咀嚼及び欠損補綴、ならびに食形態の重要性を明らかにする世界初の試みである。
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Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会の我が国において、高齢者の健康寿命を延伸することは喫緊の課題である。口腔の健康は健全な食生活を送るための基盤であり、QOL の維持・向上に必須である。特に、咀嚼は全身に様々な影響を与えていることが示唆され、その重要性が再認識されている。咀嚼を担う重要な器官である歯は、齲蝕や歯周病、歯牙破折などさまざまな原因で喪失し、その数は加齢に伴い減少する傾向にある。 本研究は臼歯の喪失または軟食が視床下部へおよぼす影響について同一の飼育環境で生育した若齢および老齢マウスの実験群とコントロール群の視床下部および海馬において、咀嚼と視床下部や海馬のastrogliosisとの因果関係を明らかにすることを、免疫組織学的、分子生物学的、行動学的に検討する。 マウスを用いて老化を検討した研究は現在まで多く行われているが、しかしどの研究でも、海馬を焦点にした研究であり、認知機能(恐怖条件付け行動)の測定、錐体細胞の定量が主である。本研究では、海馬だけでなく、視床下部にも焦点をあて、歯牙喪失が、脳の老化を促進するという点で大きく異なる。本研究では、自然老化マウスを使用することや、アストロサイトの老化であるastrogliosisを視床下部や海馬において解析、また軟食飼育といった独創的な研究を咀嚼の観点から解析を試みている。1年目は抜歯モデルマウスの飼育およびサンプル回収、解析を行う予定であったが、順調に研究が進み、2年目に行う予定であった軟食飼育についても並行して実験を行った。今後は引き続き検討を行い、得られた結果により、学会や論文発表を行う。 この研究は、歯の喪失や咀嚼機能の低下が脳、特に視床下部や海馬への老化に繋がることを明らかにし、咀嚼の重要性、欠損補綴の重要性についてエビデンスを持って啓発できる世界初の研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目は当初、軟食飼育を行う予定だった。しかし、1年目に抜歯モデルマウスの実験と並行して軟食飼育実験を進めたため、今年度は軟食実験の追試と研究のまとめを行った。 抜歯モデルマウス実験について:昨年度、既に得られた結果を吟味したのち整理し、「Molar loss induces hypothalamic and hippocampal astrogliosis in aged mice」というタイトルで Scientific Reportsに投稿、2022年4月18日に掲載された。掲載後は抜歯モデルマウスの実験で得られた結果をさらに発展させ、抜歯によって喪失した三叉神経の機能低下を三叉神経賦活化のサプリメントとして使用されているカプサイシン用いて賦活化できるかの検討を行っている。 軟食飼育実験について:当初はゲル食飼育を行う予定だったが、予備実験の結果より、ゲル食中に含まれる栄養素が固形食と異なっていたことから、粉末食に飲料水を混和した軟食に変更した他、飼育期間が短いと行動や認知機能に影響が出なかったことから長期間で条件を変えて飼育した。マウスはC57BL6Nslcマウスのオス3週齢のマウスを購入、以下3群に分けた。固形餌(C)、粉末餌に水を60%混和した軟食餌(S)群、軟食餌飼育3ヶ月後に固形餌3ヶ月にした(SH)群であった。飼育およびサンプル回収とともに、行動実験、および海馬や視床下部における各種マーカーの発現検討について効率よく検討を行った。更に、追加分の実験を行い、結果を得た。 長期間の軟食飼育S群マウスは、運動平衡性が著しく低下ただけではなく、攻撃性も高まった。また固形食に戻したSH群は軟食飼育において欠落した一部の機能が回復する傾向が見られた。現在、この軟食飼育実験については、論文を執筆中であり、令和5年度内に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目であるR5年は、2年間で得られたデータを基に論文執筆および学会発表を行う予定である。追加実験や、詳細なデータ解析も同時に行う予定である。既に抜歯論文は2022年にScientific Reportsに掲載されているが、軟食飼育論文を今年度投稿、掲載する予定である。また、上にも書いたが、抜歯モデルマウス実験の発展系として、抜歯によって喪失した三叉神経の機能をカプサイシンで賦活化を試みた検討について2023年6月に横浜で行われるIAGG Asia/Oceania Regional Congress 2023学会においてCapsaicin intake suppresses the increase of GFAP in the hippocampus のタイトルで口頭発表予定である。 今後は各研究とも現在までに得られた結果をもとに更なる研究を行う予定である他、また、本研究の結果から咀嚼の重要性を国内外に啓発していきたいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)