新規固体電気化学測定系を用いた固固界面における電極反応機構の微視的解明
Project/Area Number |
22KJ3237
|
Project/Area Number (Other) |
21J00688 (2021-2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
久米田 友明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 電極触媒 / 単結晶 / 反応機構 / 水電解 / プロトン移動 / 量子トンネル効果 / エネルギー変換 / 酸素還元反応 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、電解質溶液を凍結させた固体電解質中における、白金電極上の水素発生反応機構の解明である。電極反応におけるプロトン移動機構には、遷移状態を経由する古典的過程とトンネル効果による量子力学的過程が存在する。特定の低温条件下ではプロトン移動機構が古典-量子間で切り替わると考えられている。本研究では、表面原子配列が規整された単結晶電極と高濃度凍結電解液を用いる新規低温電気化学測定系を開発する。そして、速度論的同位体効果を利用した電極反応の速度論的解析によって、低温下におけるプロトン移動機構を解明する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、室温でのアルカリ性水溶液中におけるAu(111)単結晶電極上の水素発生反応(HER)機構解析を行った。Au電極表面におけるHERでは、プロトン共役電子移動を伴う吸着水分子の解離過程が律速段階であると考えられている。本研究では重水を用いた速度論的同位体効果を解析することで、律速段階におけるプロトン移動機構を解明した。また、カチオン種の異なる電解質(LiOH, KOH)を用い、カチオンがプロトン移動機構に及ぼす影響を検討した。実験の結果、LiOH中では遷移状態を経由する古典的過程でプロトン移動が進行することが分かった。一方、KOH中では、低過電圧では古典的プロトン移動が進行するが、高過電圧ではプロトン移動が量子トンネル効果によって支配されていることが分かった。このカチオンに依存したプロトン移動機構は、カチオン種によって誘起される水分子の吸着配向が異なることに起因していると考えられる。 次に、電気化学環境下で利用可能な赤外分光測定系を構築した。低温電気化学系への導入に先立ち、まずは室温系への適用として、Ir(111)単結晶電極表面に吸着したリン酸イオンの振動分光測定を行った。Irは酸素発生反応(OER)触媒として有用な材料であり、アニオン吸着過程などの固液界面現象の一層の解明が求められている。当該研究では、リン酸緩衝液を用いて幅広いpH領域におけるリン酸イオンの吸着過程を調査した。Ir(111)表面上では先行研究のPt(111)およびAu(111)と比較してより低電位からリン酸イオンの吸着が観測された。また、吸着開始電位はpHの増加に伴って高電位にシフトした。酸性中ではリン酸イオンの強い吸着によりIr表面の酸化物が不安定化することがわかった。本研究により、OERの支配因子である表面酸化物の安定性とリン酸イオンの吸着過程との相関が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度開始時の計画通り、Au(111)電極上の水素発生反応におけるプロトン移動機構を解明し、プロトントンネリングが電解質カチオンによって誘起されることを発見した。当該成果はプレプリントサーバー上で公開されている(https://doi.org/10.48550/arXiv.2207.00138)。また、先行研究において量子トンネル効果は低温でも観測されており、当該成果は今後の低温電気化学研究における重要な知見になると考えられる。また、電気化学環境下での赤外分光測定システムが完成し、実際に室温で電極表面の振動分光測定に成功した。今後は、この赤外分光測定システムを用いて低温下での電極表面分析が可能となる。以上の理由により、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に実施したAu(111)電極上の水素発生反応について、カチオン依存プロトン移動機構のメカニズムを解明する。カチオン種によってプロトン移動に関与する水分子の吸着配向が変化すると考えられるため、赤外分光法を利用して反応中の水分子の観測を行う。 次に、これまでに実施した室温中における単結晶電極上の反応機構解析をもとに、低温下における電極反応機構を解明する。低温電気化学測定には、前年度までに設計した液体窒素式ガラスセルを利用する。電極にはPt(111)およびAu(111)を用い、室温から-150℃の範囲で温度制御した濃厚電解質水溶液中で水素発生反応測定を行う。重水を用いた速度論的同位体効果を解析することでプロトン移動機構の温度依存性を解明する。さらに、赤外分光法により凍結電解液と電極による固固界面のその場観察を実施する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(8 results)