Project/Area Number |
22KK0119
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 50:Oncology and related fields
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
横山 明彦 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10506710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小俣 洋介 国立研究開発法人国立がん研究センター, その他部局等, 外来研究員 (40968559)
金井 昭教 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (60549567)
川村 猛 東京大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (70306835)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥20,150,000 (Direct Cost: ¥15,500,000、Indirect Cost: ¥4,650,000)
Fiscal Year 2026: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 腎腫瘍 / 白血病 / ENL / 分子標的薬 / Wilms腫瘍 / MLL / 分子標的療法 |
Outline of Research at the Start |
Wilms腫瘍は小児に見られる腎腫瘍であり、多様な変異によって引き起こされる。近年のゲノム解析によって、ENL遺伝子における数アミノ酸残基の欠失もしくは挿入が腎腫瘍を形成する事が示された。ENLはMLL転座白血病で恒常的に活性化しているMLL/MOZ/AEP転写システムの構成因子であり、このWilms腫瘍で見られるENL変異体をマウスの造血細胞に発現させると白血病を引き起こした。本研究でENL変異型Wilms腫瘍の発症メカニズムを明らかにし、MLL転座白血病に奏功する分子標的薬がENL変異型Wilms腫瘍にも奏功するかどうかを実験的に検証する事で、小児腎腫瘍の新しい治療法の提案を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
小児がんにおいては白血病や腎腫瘍が多く見られる。異なる臓器で引き起こされるがんはそれぞれの臓器に適した異なるメカニズムで生じると思われていたが、白血病と腎腫瘍両方を引き起こすポテンシャルを持ったユニークな遺伝子変異が見つかった。白血病においてはMLL変異やMOZ変異によって、MLL/MOZ/AEPなどの転写制御因子を介して細胞の自己複製が促進され白血病の発症に至る。MLL/MOZ/AEP転写システムの構成因子であるENLの変異がWilms腫瘍においても発見され、この変異体をマウスの造血細胞に発現させると白血病を引き起こした。この結果から、我々は白血病と腎腫瘍が同じENLの活性化型変異によって起こるという仮説を立て、本研究において検証する。 研究目的1においてENL T1変異体は野生型のENLと比べてどのような機能的な違いがあるのかを明らかにすることを目指した。MOZとの結合以外にT1 変異体特異的に結合が増強・もしくは減弱する結合因子を探索するため、fanChIP法で分離精製したENL複合体とENL T1変異体複合体を質量分析にて解析し、結合因子を網羅的に同定することを試み、T1変異体にユニークに結合するタンパク質を複数見出した。 研究目的2においてENLのYEATSドメインとMOZ/MORFヒストンアセチル化酵素の結合状態の構造を原子レベルで決定することを目指した。ENLとMOZの結合強度がWilms腫瘍変異によって変化するかどうかを調べ、in vitroの結合アッセイにてT1変異が結合を増強することを確認した。 研究目的3においてENL T1変異体による発がんモデルを構築し、これまでにMLL転座白血病に対して抗腫瘍効果を持つ事が示された分子標的薬の薬効を評価することを目指した。T1白血病細胞に対して各種薬剤の薬効評価を行い、いくつかのMLL白血病に対する分子標的薬が抗腫瘍効果を発揮することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案した研究目的のほとんどに順調な進捗が見られた。T1変異に特徴的なインタラクトームの解析については得られた結果を論文に発表する準備をしている。一方でWilm腫瘍のマウスモデルの構築はまだ構築できていない。T1変異体を発現するマウスは作成できたが、腫瘍の観察には至っていない。これは単一の遺伝子変異だけでは腫瘍形成に至らしめることができないことによる可能性がある。今後、より長期間モニタリングするとともに、別の遺伝子変異と掛け合わせることを検討する。さらには、新たなモデル系としてゼブラフィッシュに腎腫瘍を発症させる実験系を構築することを試みる。 国際共同研究として、Kutateladze研究室とさらに共同研究が始まり、いくつかの論文発表に至った。特にMOZ/MORFの機能としてメチル化されていないCpG配列に結合するメカニズムを明らかにして国際的な科学誌に発表したことは意義深い。MOZ/MORFのホモログであるHBO1はMLLと結合することを我々は以前に発表してきた。Wilms腫瘍発症に深く関わるMLL/MOZ/AEP転写システムの全容を明らかにするため、HBO1やその複合体構成因子であるJADEファミリータンパクの機能解析をKutateladze研究室とカナダのCote研究室と開始し、論文を発表するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はENL変異体によるWilms腫瘍モデルの構築とそれを用いた各種分子標的薬の薬効評価を推進する。これまでの結果から、単一の遺伝子変異だけではWilms腫瘍形成に至らしめることができない可能性が示唆されている。単純なノックインマウスやトランスジェニックマウスの作成では病気の発症までを再現できない可能性があるため、腫瘍発症を促すために別の発がんドライバー変異を付加的に導入することを検討する。また、異なるシステムで発がんモデルを構築することも同時に目指していく。ゼブラフィッシュは発生初期の研究に適した動物モデルである。ゼブラフィッシュの腎臓にENL T1変異体を発現させることで、人のWilms腫瘍を再現できるかどうかを検討する。 ENL変異体の作用機序については順調に研究が進捗したことから、次の課題として、ENL変異体特異的なタンパク質間結合を構造生物学的な手法を用いて解析することを目指していく。リコンビナントタンパク質を用いた結合アッセイが構築できているので、これらのマテリアルを用いて構造解析等を目指していく。 また、Wilms腫瘍発症に深く関わるMLL/MOZ/AEP転写システムの全容を明らかにするため、HBO1やその複合体構成因子であるJADEファミリータンパクの機能解析をKutateladze研究室とカナダのCote研究室と開始しているが、これに関しても本研究に資することから、積極的に推進していく。
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