Project/Area Number |
22KK0189
|
Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大谷 直輝 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50549996)
|
Project Period (FY) |
2023 – 2025
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥14,820,000 (Direct Cost: ¥11,400,000、Indirect Cost: ¥3,420,000)
|
Keywords | 認知言語学 / 構文文法 / 用法基盤モデル / コーパス言語学 / 変種・変異・変化 / 深層学習 / 社会言語学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、様々なタイプの大規模な言語コーパスを用いて、言語の変化・変種・変異という3つの観点から構文(constructions)を考察することで、理想化・平準化された言語知識ではなく、言語使用から創発する非均質的な言語知識のありようを分析するための理論と方法論を精緻化する。この目的を達成するため、「人間が持つ言語知識のありようを構文の観点から明らかにするための理論と方法論を精緻化する」という基課題を発展させ、「言語使用から創発する言語知識のありよう」を社会的な慣習と認知能力の反映という2つの観点から解明するための2つの研究プロジェクトを展開する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は日本国内にて,2024年8月から2026年3月までランカスター大学で行う予定の「認知社会言語学の構築」に関する共同研究に備えて,「理想化された知識」ではなく変種・変異・変化を内在し,社会の中で柔軟に変化する言語知識のありように関する研究を開始した。その中で,認知社会言語学の構築に関わる理論と方法論に関する以下の研究を行った。 第一に,無意識のうちに言語研究の前提となり,様々な形で個別言語の分析に影響を与える言語理論や方法論に潜むバイアスについて論じる書籍『言語研究に潜む英語バイアス』を企画し,代表編者として,3回の研究会を行うとともに書籍の一章となる「言語研究の分析道具に含まれるバイアス」に関する原稿の執筆を行った。第二に,『新しい認知言語学:言語の理想化からの脱却を目指して』(ひつじ書房)に,理想化された均質的な知識としての構文ではなく,方言やジャンルで異なる構文の特性を論じた「better off not かnot better offか―否定辞notを含むbetter off構文に関する認知社会言語学的研究―」を執筆した。第三に,大規模言語モデルを用いた様々な言語研究に関するプロジェクトを開始し,その中で,言語を実証的に分析するツールとしての言語モデルの活用方法を提案した。 また,2024年8月からのランカスター大学での共同研究に向けて,共同研究者のHollemann氏と,今後の研究計画に関して意見交換を行い,品詞の社会言語学的な側面という研究テーマについて研究を行うことを確認するとともに,共同研究で扱ういくつかの具体的な構文に関して検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は滞在先のHollemann教授と連絡を取りながら,2024年8月に開始する在外研究の準備を進めた。特に学内の各部署との調整を行い,20か月滞在ができることとなった。以上のことから,共同研究するための滞在面での準備は順調に進んでいると言える。同時に,滞在先とも密接に連絡を取り,共同研究の開始後すぐに,研究に集中できる環境を整えている。 研究に関しては,認知と社会の関係を扱うためのプロジェクト(代表:渋谷良方氏,書籍企画でひつじ書房から出版予定)に参加をしながら,理想化された知識ではなく,ジャンルや方言の中で変容する知識のありようについて,多角的な側面から検討を行った。また,執筆の過程で,方言やジャンルに注目したコーパス分析の方法論についても検討を行った。さらに,社会認知言語学を構築するうえで検討することが必要となる,言語研究に潜む様々な無意識のバイアスを可視化するための研究会を開催し,言語研究の前提とされている文法現象や言語理論を相対化する試みを行った。 また,方法論の面では,従来のコーパス言語学の方法論だけではなく,現代の深層学習の発展を受け,深層学習を用いた言語研究の方法論に関する知見を深めるために,言語処理,計算言語学,人工知能の研究者との意見交換を行いながら,共同研究を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は8月からランカスター大学にて,国際共同研究を行う予定である。 渡英前の4月から7月では,具体的に研究を行うための材料探しや準備を行う。具体的には以下の研究を行う。第一に,談話的機能や語用論的機能を持つ具体レベルの構文の発掘を行う。これまでに論じられていない構文現象の発掘や,言語における特定の語句の偏った傾向の調査,構文の談話的特徴の精査等を行うことで,今後の研究につなげる題材を見つける。二つ目の課題は,方法論の強化である。特に,コーパス言語学の手法だけでなく,現代の大規模言語モデルの中に,どのような情報が収集されているかを検討し,言語的なアウトプットのみから構築された知識に,どのような情報が収集されているかを検討する。 8月から2025年3月はランカスター大学にて在外研究を行う。主な研究計画は以下のとおりである。第一に,コーパスを用いた談話研究の世界的な拠点であるランカスター大学における様々な研究会に参加をする中で,方法論に関する見識を深める。第二に,ランカスター大学における社会言語学や認知言語学の研究会に参加をし発表をすることで,今後の研究に向けた有益な示意見交換を行う。第三に,共同研究者のHollemann教授と,2つの研究プロジェクトを開始するための,意見交換,打ち合わせ,データの作成を行う。 以上の3つの具体的な研究を行うことで,認知社会言語学を行うための,理論的な背景や方法論の精緻化を行いながら,具体的な構文の現象を分析することを予定している。
|