Project/Area Number |
22KK0238
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 19010:Fluid engineering-related
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Research Institution | Osaka University (2023) Toyohashi University of Technology (2022) |
Principal Investigator |
吉永 司 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50824190)
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Project Period (FY) |
2023 – 2025
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥14,300,000 (Direct Cost: ¥11,000,000、Indirect Cost: ¥3,300,000)
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Keywords | 病的声帯 / 筋線維 / 声質 / 有限要素法 / 気流モデル / 発声障害 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,発声障害の治療に活用可能な声帯振動の解析手法の確立を目指す.喉頭の周りには多くの筋線維が複雑に配向しているが,それらを考慮した病的な声帯振動の解析はこれまで行われていない.そこで,カリフォルニア大学のZhang教授とともに,医療画像から各筋線維を抽出して振動解析モデルを構築することにより,様々な筋線維の収縮が声帯の振動特性に与える影響を明らかにする.解析を多数の被験者に適用し,医療画像から患者の発声様式を高精度に予測できる技術を確立することで,発声障害患者の手術結果などを予測できる解析ソフトウェアを開発する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,次年度から共同研究先のアメリカで実施する解析の準備を主に行なった.まず,喉頭周りの筋線維応力のモデル化のため,単純化した披裂軟骨,輪状軟骨,甲状軟骨に対して声帯筋とその他内喉頭筋を有限要素法によりモデル化し,収縮応力を刺激の度合いに応じて与えることにより,声帯の内転や外転を模擬し,その状態で声帯振動の固有値解析を行う手法を構築した.この手法を応用して,被験者の医療画像から抽出した喉頭筋形状に対してモデル化を行う.また,声帯の単純形状モデルに対して,固有値解析により算出した固有振動モードを足し合わせることにより,過渡応答解析を実施し,1次元および3次元の気流モデルと連成することにより,声帯の自励振動を表現した.3次元の気流モデルではVolume Penalization法と呼ばれる埋め込み境界法の一種を用いることで,気流の計算格子を変形させることなく,声帯壁の領域を変化させ,3次元的な声帯の振動を気流の計算格子の中で表現した.この手法により,声帯同士の完全な接触も表現できるようになった.1次元および3次元気流モデルによる声帯の振動様態を比べると,おおむね似た振動となるものの,細かな波形が異なり,3次元的な気流の圧力変動が声帯振動に影響していることが示唆された.ただし,1次元気流モデルは最も単純なモデルを用いており,気流の剥離位置などを考慮することで,結果が改善する可能性がある.これらの技術は声帯の振動から声質を予測する上で基礎となる技術であり,次年度から共同研究先にて医療画像データからのモデル構築に応用することで,病的声帯のシミュレーション技術の構築を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,次年度から行う共同研究先での解析の基礎が構築できたため,進捗状況はおおむね順調である.まず,病的声帯をモデル化する上で,内喉頭筋を有限要素法により表現することが必要である.そのため,内喉頭筋が繋がる喉頭の軟骨を,先行研究を元に設計し,軟骨同士を筋線維モデルで接続した.そして,その筋線維モデルに収縮応力を刺激に応じてかけることにより,各筋線維を収縮させ,声帯の内転および外転を表現する.声帯の内転には輪状披裂筋や横披裂筋など,複数の筋線維が関わっており,内転の度合いや,声帯の形状が異なってくる.それらを先行研究と同様にモデル化できているのかを確認するところまで実施できた.そのため,次年度共同研究先へ訪問した際には,構築したモデルをそのまま医療画像から抽出した形状に適用することで,早急に解析を進めることができる. 一方,声帯の形状を予測しただけでは,声帯から発生する声の質がどのように変化するのかはわからないため,内転した声帯形状からどのように声帯が振動し,音を発生させるのかを予測する必要がある.そのため,声帯の有限要素モデルに対して固有値解析による過渡応答解析を実施し,その過渡応答解析と気流の解析を連成させることで,声帯の自励振動から発生する音を予測する.本年度は,3次元気流解析と声帯の有限要素モデルを連成させることで,3次元的な声帯の振動からどのように音が発生するのかまで計算することができた.また,これまで先行研究で用いられてきた1次元気流モデルと比較し,3次元的な気流による影響を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は基礎的な解析技術を構築できたため,次年度はこれらを応用して,病的声帯のシミュレーション技術構築を目指す.具体的には,まず共同研究先のUCLAにて声帯の医療画像を提供してもらい,医療画像から声帯や声帯周りの筋線維形状を抽出することで声帯モデルを構築する.この手法により,健常な声帯と病的な声帯の比較が可能となる.また,筋線維への刺激を与えることで声帯の内転時の形状変化を調べ,変形した声帯が気流によりどのように振動するのかを明らかにする.また,声帯周りの筋線維の走行は主に5種類あり,それぞれに違った刺激を与えた際にどのように声帯の振動特性が変化するのかを明らかにする.これらの解析を病的声帯のモデルに応用することにより,病的声帯の声の変化を予測し,病的声帯からなぜ上手く声が出せないのかを明らかにするとともに,手術の結果を予測できるシミュレータの構築を目指す.
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