Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、幾何学フラストレーションと量子効果に基づく量子スピンアイス状態が期待されるPr系パイロクロア磁性体の物性を、単結晶を用いた多角的な物性測定により解明することを目指す。本年度の主要な成果を下記に示す。(1)浮遊帯域法およびフラックス法により、Pr_2Zr_2O_7を中心とするPr系パイロクロア磁性体の純良単結晶の育成に成功した。(2)Pr_2Zr_2O_7の純良単結晶を用いた極低温までの磁化・比熱測定により、スピンアイス相関をもたらす約1Kの磁気的相互作用があるにもかかわらず、90mKという低温までスピン凍結が抑制されていることを明らかにした。これは、従来の古典スピンアイスにはない量子揺らぎの存在を示しており、Pr系パイロクロアにおける"量子性の強いスピンアイス状態"の実現を強く示唆する。(3)希釈冷凍機による極低温下誘電測定から、Pr_2Zr_2O_7における明瞭な誘電性と磁性の相関(磁気誘電性)を発見した。さらに、複数周波数での測定から誘電緩和現象を見出し、緩和時間が熱活性型のアレニウス則に従うことを明らかにした。大変興味深いことに、その活性化エネルギーは本系における磁気モノポール対の生成エネルギーとほぼ同じであり、誘電緩和は磁気モノポール励起と密接に関連していると考えられる。これらの成果は、日本物理学会(2011年秋季大会、第67回年次大会)において発表済みである。研究実施計画では、本年度は関連するPr系パイロクロア磁性体の物性測定も実施する予定であったが、翌年度に実施を予定していた磁気誘電性研究の予備測定で興味深い結果が得られたために、Pr_2Zr_2O_7の物性解明に注力した。また、幸いにも平成24年度から日本学術振興会特別研究員に採用して頂いたため、本年度を以って本研究課題を辞退することとなった。しかし、特別研究員としての研究課題は本研究課題と密接にリンクしており、本研究で得られた成果を基盤として、今後も量子スピンアイス状態の研究を精力的に展開していく。
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Journal of Physics : Conference Series
Volume: 320 Pages: 012079-012079
10.1088/1742-6596/320/1/012079
Volume: (掲載確定)