Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
片腎を摘出したラットにアルドステロンを皮下投与するとともに、8.0%NaCl食を負荷すると高血圧と腎障害を呈するが、同時にセリンプロテアーゼ阻害薬を投与することにより、有意な降圧と腎障害の軽減を認めた。このラットの腎蛋白を用いたセリンプロテアーゼ特異的Zymographyにより、対照群に比べ活性が著明に亢進した約80kDaのセリンプロテアーゼを認めた。腎蛋白を硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した後Zymographyを行い、当該セリンプロテアーゼ活性を認める部位をLC-MS/MSにより分析し、ある種のセリンプロテアーゼを同定した。当該セリンプロテアーゼをラット腎線維芽細胞の培養上清に添加するとTGF-b1、PAI-1、MCP-1、TNF-a等のサイトカインの発現亢進を認め、このセリンプロテアーゼが腎障害を誘導していると考えられた。セリンプロテアーゼ阻害薬はin vitroの系において当該セリンプロテアーゼ活性を抑制し、線維芽細胞における線維性・炎症性サイトカインの発現誘導を抑制した。セリンプロテアーゼによる組織障害にprotease activated receptor (PAR)が関与しているとの報告があり、腎線維芽細胞において発現を認めたPAR-1,2および3を個々にもしくは同時にknock downしたが、当該セリンプロテアーゼによるサイトカイン誘導に変化は認めず、他の機序を介していると考えられた。本研究によりアルドステロンと食塩により腎組織中に誘導されるセリンプロテアーゼが増悪因子として作用しており、セリンプロテアーゼ阻害薬がこのプロテアーゼの活性を抑制することで降圧・腎保護作用を発揮していると考えられた。今後はさらにこのプロテアーゼの活性亢進およびプロテアーゼによる腎障害誘導の機序を解明するため研究を継続する予定である。
All 2011
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