Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
C57BL6/N(WI)マウスに2.5%DSSを服用させると経時的な体重減少が認められる。この時、腸内短鎖脂肪酸濃渡の変化を測定した所、酢酸、フマル酸やプロピオン酸の濃度変化は無かったが、酪酸濃度のみがDSS服用時に半減した。腸内細菌産生産物の一種である短鎖脂肪酸(酪酸)を、至摘濃度にて培養細胞(NCI-H716)上清内に添加した。特に酪酸はヒストン脱アセチル化複合体阻害作用を有しており、種々の遺伝子発現活性化に関与している。酪酸添加における培養細胞からmRNAを単離し、cDNAに変換した後にDNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現変化を解析した。検討項目としていたGLP-1遺伝子は、発現量が約25%程度に減少していた。一方で、細胞接着因子であるMFGE8は5倍程度の顕著な発現上昇を認めており、この遺伝子について機能解析を進めて行く事とした。クロマチン免疫沈降法を用いて、MFGE8プロモーター領或のヒストンH3K9アセチル化を評価した所、酪酸添加時、経時的に同領域のアセチル化が増加している結果が得られた。次にWTマウス及びMFGE8ノックアウト(KO)マウスに対して、各々DSSの投与を行いつつ、加えて酪酸の経直腸内投与をを行った。まずWTマウス及びKOマウス各々の腸内細菌叢を16S rRNAメタゲノム解析にて調べたが、菌叢の大きな差異はみられなかった。コントロールマウス(生理的食塩水投与)に比べて、酪酸の投与を受けたWTマウスは、有意な体重減少の抑制がみられたものの、酪酸投与KOマウスでは有意差は認められなかった。ELISA法を用いて、腸組織における炎症パラメーターの測定も行ったが、やはり酪酸投与を受けたWTマウスでは、炎症性サイトカインの発現抑制がみられたが、KOマウスでは有意な差はみられなかった。