Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究課題では、歯周病の進行や病態形成への低酸素環境の役割について解析を行った。まず、in vivoマウス実験モデルを用いて炎症歯周組織での低酸素環境の局在について解析を行った。すなわち、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g.)を経口感染させ実験的歯周炎モデルマウスを作製した。非感染マウスには基剤のみを投与した。非感染マウスに比べP.g.感染マウスでは、歯槽骨の吸収が進んでいることがμCTにて確認された。このモデルマウスにピモニダゾール塩酸塩を腹腔内投与し、歯周組織におけるピモニダゾール塩酸塩の集積を免疫組織学的手法により検討することにより歯周組織における低酸素部位を解析した。その結果、非感染マウスにおいて、歯根膜や歯髄、歯肉上皮等にピモニダゾールの陽性シグナルを認めた。28感染マウスでは歯根膜や歯髄での陽性像に変化は認めなかった一方で、歯肉上皮における陽性シグナルは増強された。このことから、歯周炎の進行に伴い、歯肉上皮における低酸素環境が亢進する可能性が示唆された。そこで次に、in vitroにおいて、歯肉上皮細胞株epi4の炎症反応応答に低酸素が及ぼす影響について解析を加えた。すなわちepi4を低酸素環境(5%O_2)にて培養した際のIL-1 betaに対する反応性の変化を検討した。その結果、IL-1 beta刺激によって誘導されるIL-6、IL-8の発現は、5%O_2下では、mRNA発現、タンパク発現ともに抑制されることが明らかとなった。一方で、低酸素環境への応答性に重要な役割を担う転写因子HIF-1 alphaを、阻害剤(chetomin).あるいはsiRNAを用いて抑制するとIL-6およびIL-8の発現は上昇した。以上の結果から炎症歯周組織において、低酸素環境が歯肉上皮の炎症反応を制御している可能性が示唆された。