Project/Area Number |
23901004
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
哲学・芸術学
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 裕子 早稲田大学, 文学学術院, 非常勤講師
|
Project Period (FY) |
2011 – 2012
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
|
Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
|
Keywords | 唐代の造寺造仏 / 奈良時代の造寺造仏 / 官営工房 |
Research Abstract |
本研究の目的は、奈良時代の工人たちの造形的規範を検討することとし、目的(1)奈良時代の造寺造仏にみえる造形的規範の源流、目的(2)奈良時代の建築と安置仏の関係、以上2点を主軸として進めた。 本研究の内容として、興福寺中金堂、法隆寺金堂、唐招提寺金堂をPC上の三次元空間に置き換え、そこに存在する造形的規範を分析した。つぎに、国内及び中国に現存する作例の実測・撮影を実施、2012年9月に河南省・山西省調査をおこなった。 以下、研究の成果を述べる。造形的規範は予想どおり大規模なものほど緻密に計画されていたが(目的(1)成果)、法隆寺金堂、唐招提寺金堂は先行研究により堂宇と安置仏を同時に構想して造ったものではないことがわかっており、興福寺中金堂も当初の建築や仏像がのこらないために規範の分析数値に柳か不安がある。 一方、中国の作例については雲岡や龍門といった石窟のほか、長安旧光宅寺石仏寵(宝慶寺石仏寵)が、発願事情の明らかである点(本山路美氏)、作例が多数現存する点、そのほとんどが日本に現存する点から本研究の核になると考えた(目的(2)成果)。しかし光宅寺寵は制作当初いかに安置されていたのかがわかっておらず、これまでに楊政俊氏、顔娟英氏らが復原を試みているが、いずれが妥当な案であるか判断が難しい。したがって7~8世紀の現存作例のほか、同時代に大きく影響を受けている12~13世紀の作例や、光宅寺寵と像高と状況がよく似た作例、すなわち厨子入のような作例も含めて検討した。 本研究の結論として、皇帝や天皇といった最高権力者周辺で造寺造仏が行なわれる場合には当初の想定どおり、特定の工人集団が手掛けたとみられるために共通の美意識が存在していたと考えられる。こうした結論を立証するための論文を現在執筆中であるが(政治的事情により現地調査実施が予定より1年遅れたため)、検討の過程での発想をまとめた論文が今月中に刊行される予定である。 今後の課題として、唐代あるいは奈良時代の工人集団の美意識の源流が仏教伝来以前の中国文化にあったことを実証していくことを挙げ、本研究の報告とさせていただきたい。
|