Research Abstract |
1.研究の目的・方法 (1)本研究は,高等学校理科「生物」において,「発酵」,「微生物」,「バイオマス」をテーマとした持続発展教育(ESD)教材を開発し,それらを取り入れた授業モジュールを作成することを目的とした。 (2)高等学校理科「生物I」および「生物II」で扱う発酵や微生物などに関する教材をもとにして,独立行政法人酒類総合研究所および独立行政法人産業技術総合研究所の研究者の指導・助言を仰ぎながら,新たにESDの要素を取り入れた実験・実習教材を開発した。 (3)開発したESD教材を用いた授業モジュールの実践を,高等学校2年生を対象とした学校設定科目「生命科学」の中で行った。事後に,実践結果の分析と考察を行い,授業モジュールを完成させた。 2.研究の成果 (1)授業モジュールの実践を通じて,生徒に「発酵」,「微生物」,「バイオマス」に関する基礎的な知識・技能を習得させ,「我が国の伝統的な発酵・醸造技術とその研究は,持続可能な社会を支える基盤技術となりうるものとされている」という考え方について理解させることができた。また,その考えについて評価させ,得られた知識や実験結果に基づく科学的な事実・根拠を活用して,客観的かつ統合的な判断を行う機会を提供することができた。 (2)事後アンケートの結果では,91%の生徒が(1)に示した考え方を「理解できた」と回答し,74%の生徒が(1)に示した考え方を「現時点で『持続可能な社会を支えるもの』として評価できる」と回答した。また,自由記述の結果から,多くの生徒が発酵・醸造技術および微生物を利用したバイオマスエネルギーの開発・普及に関心を持ち,持続可能な社会の実現に向けて創造的に思考しているようすが伺えた。以上の結果から,開発した教材および授業モジュールの有用性は高いと判断し,来年度以降の通常のカリキュラムに導入し,実践を積み重ねていく。
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