Research Abstract |
本研究の目的は,数学と理科における教育課程上の指導内容を比較し,数学科のカリキュラム上に理科の内容を位置付け,理科との関連付けを図った数学科教材を開発することである.また,開発した教材の有効性を検討するために実践授業の前後において質問紙調査を実施し,生徒の理数における興味・関心や数学と理科の関連性についての意識が高まることを統計的に分析し,開発した教材の有効性を検討することである. このため,まず数学と理科のカリキュラムの内容を検討し,理科と関連させた教材を考案して学習指導案を作成した.具体的には,数学Iの単元「図形と計量」で,地学と関連させて正弦定理を利用しケプラーの法則を導く過程を学ぶもの,生物と関連させて最小原理について学ぶものの2つの教材を開発した.次に,実践授業を行い,授業の前後による質問紙調査の結果から,開発した教材の有効性を検討した.質問紙調査は理数への興味・関心に関するものと授業の感想で構成し,理数への興味・関心については5肢選択法で,授業の感想については自由記述で回答させた。分析方法は,理数への興味・関心については授業前後における有意差を求め,授業の感想についてはテキストマイニング手法で分析を行った.さらに,この2つの集計結果をあわせてコレスポンデンス分析を行った. 実践授業は高校2年生の2クラス,78名を対象に行った.開発した教材は数学Iで扱う内容であるが,実施校では数学Iの「図形と計量」は12月から1月にかけて学習する予定であるため,高校2年生を調査対象とした.授業時間としては,質問紙調査に回答する時間を含め,正弦定理は2時間,最小原理は3時間で行った.事前・事後調査の結果,調査対象とした生徒は,理科との関連付けを図った授業を行うことで,数学と理科に対する興味・関心や,数学と理科が関連していることの認識が高まることが分かり,教材の有効姓が示唆された.
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