これまで有機化合物を対象として行われてきた計算化学演習の適用では対応できない無機化合物の電子状態に特有な概念として、配位数の多様性、酸化数の概念、および多様な色の起源である励起遷移の帰属などが挙げられる。また、奇数電子系分子も不安定なラジカルではなく安定な化合物として存在できることが有機化合物とは本質的に異なる無機化合物の特質として挙げることができる。 このような無機化合物の電子状態は、有機物に適用して大きな成功を収めたRHF近似では統一的に取り扱うことが困難で、UHF近似にも対応できる半経験的分子軌道法を用いることによりはじめて取り扱うことが可能となる。本研究では、UHF近似に対応した半経験的分子軌道法を用いる計算化学演習のカリキュラムを立案し、分子軌道法の概要と使用法の解説を含めた、90分15回の演習授業のシラバス構想を作成した。要望があれば、実際の授業の担当あるいは授業アシスタントに対応することができる。
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