Research Abstract |
本研究は,進行食道癌に対し術前に通常2クール行われる5-FU/CDDP(FP)療法における食欲不振と腎障害の重症度に相関があるか解明することを目的とした。昨年度までに,FP療法の主な副作用は腎障害と食欲不振であること,2クール目が減量・中止になった症例の約半数はこれら非血液毒性によるものであることを明らかにした。また,新規制吐薬とpre-hydrationの導入が,食欲不振と腎障害の重症度の軽減に寄与したことから,食欲不振による飲水量の低下が腎障害を助長する可能性が考えられた。 今年度は,昨年度の35例に新規18症例を上乗せして解析した。その結果,腎障害(血清クレアチニン上昇)と食欲不振は,病期IIよりも病期IVの方が重症化する一方,食道狭窄に伴う嚥下困難を有する症例で腎障害が重症化するわけではなかった。そこで,新規症例において飲水量や尿量のモニタリングを行ったところ,飲水量と腎障害に相関はなく,食欲不振による飲水量の低下は多くの場合3日目以降に認められた。尿測症例を解析したところ,160%の症例が目標尿量(1日目3,000mL,2日目~3日目1,500mL)を下回っていたが,目標尿量を達成した症例との間に,腎障害発現の差は認めなかった。既往歴と腎障害発現割合を検討したところ,糖尿病では差がみられなかったが,降圧薬服用群は非服用群と比べGrade2の腎障害発現率が約20%高かった。なお,Grade3の食欲不振発現群と非発現群(食欲不振なし)では,在院日数中央値に5日の開きがあった。腎障害の重症度と在院日数には相関を認めなかった。 これらのことから,食道癌術前化学療法FPにおいて腎障害や食欲不振の発現に注意しなければならない症例として,病期IV症例・降圧薬服用症例が挙げられた。この結果は高用量CDDP投与時における個別化医療に寄与する重要な知見と考えられる。
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