Research Abstract |
近年、H5N1型の高病原性トリインフルエンザやA型H1N1のブタとトリとの交配による高変異型などの出現が予想され、新型インフルエンザの世界的大流行が懸念されている。インフルエンザウイルスは、宿主細胞のタンパク質をハイジャックしながら、ウイルス由来のRNAポリメラーゼ複合体(PA,PB1,PB2)によりウイルスのgenomic RNAをRNAへと複製および転写する。ウイルスのgenomic RNAの複製および転写を抑制できれば、細胞内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができる。今回の奨励研究において、インフルエンザの撲滅に向けた創薬基盤を目指し、PA/PB1タンパク質(A/H1N1由来)およびPB1/PB2タンパク質を抗原としたマウスモノクローナル抗体の作製をおこない、多数のモノクローナル抗体を取得した。蛍光標識した各々の精製モノクローナル抗体を細胞内に導入後インフルエンザウイルス(A/H3N2)を感染させ、ウイルスの挙動をタイムラプス顕微鏡下に観察した。インフルエンザ感染後のPAタンパク質が細胞質から核内へ移動、その後核内から細胞質へ再移動するという時空間的挙動を観察できるマウスモノクローナル抗体PA11.9を取得した。今後、インフルエンザウイルス増殖におけるPA11.9モノクローナル抗体の詳細な解析をおこなうことにより、インフルエンザに対する創薬基盤の構築に大きく貢献するものと考える。
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