Project/Area Number |
23H00077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 10:Psychology and related fields
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Research Institution | Shirayuri University |
Principal Investigator |
菅原 ますみ 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (20211302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 仁 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (00754889)
榊原 洋一 お茶の水女子大学, 名誉教授 (10143463)
室橋 弘人 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (20409585)
川島 亜紀子 (小林亜紀子) 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (20708333)
舟橋 敬一 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 精神科, 副部長 (30383269)
松本 聡子 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 研究協力員 (30401590)
齊藤 彩 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (30794416)
吉武 尚美 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (40739231)
田中 麻未 帝京大学, 文学部, 准教授 (90600198)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,380,000 (Direct Cost: ¥32,600,000、Indirect Cost: ¥9,780,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,060,000 (Direct Cost: ¥6,200,000、Indirect Cost: ¥1,860,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,410,000 (Direct Cost: ¥5,700,000、Indirect Cost: ¥1,710,000)
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Keywords | 逆境的小児期体験 / 逆境的成人期体験 / レジリエンス / 生涯発達 / 保護的・補償的小児期体験 / 保護的・補償的成人期体験 |
Outline of Research at the Start |
小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)が及ぼす成人期の心身の健康への影響について、発達心理学の領域では、虐待等の養育リスクに加え、貧困やいじめ・劣悪な学校要因も含む広範囲な要因の影響性や、悪影響を緩和する保護的・補償的体験(Protective and Compensatory Experiences: PACEs) の研究が活性化している。本研究では、社会的養護を経験した成人及び乳児期からの長期追跡を継続している成人を対象とし、心身の健康と社会適応に及ぼすリスク(ACEs)とレジリエンス(PACEs)の統合的な影響性について実証的に検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)が及ぼす成人期の心身の健康や社会的適応への影響について、悪影響の発現を防止したり緩和したりする保護的・補償的体験(Protective and Compensatory Experiences: PACEs)の測定と合わせて統合的な検討をおこなうことを目的としている。令和5年度は以下の作業を進めた: (1)ACEsに関する国際的な尺度である Maltreatment and Abuse Chronology of Exposure: MACE尺度 日本語版の信頼性・妥当性の検証を原作者のグループ(Dr.Hays-Grudo, J., Dr. Morris, A.)とともに進め、20歳~79歳までの大規模ウェブ調査(13,149名)の結果を解析した。ACEs経験者が日本でも3割を超え、かつ50代以上で明らかな減少傾向が認められ、ACEsの早世効果(ACEsの数が多いほど寿命が短縮する)を示唆する結果が得られた。また小児期でのPACEsとともに成人期現在でのPACEsは心身の疾患既往歴や現在の精神的健康度に対して比較的大きな主効果が認められ、成人期現在のPACEsがACEsの悪影響を乗り越える有力な要因となる可能性が示唆された。これらの結果について2023年度の各種学会にて発表をおこない、2024年度6月開催の国際行動発達学会(ポルトガル・リスボン)でのPACEsに関するシンポジウムへの招聘を受けるに至っている。 (2)社会的養育を受けている青少年を対象とした縦断調査を実施するにあたり、原作者チームとともに思春期版PACEsの日本語版を開発し、全国の中高生(中1~高3,1,320名)を対象とした信頼性・妥当性検証のための短期縦断調査を実施した。 (3)養護施設に在所中の中学1年生~高校3年生とその担当職員を対象とする在所中の経年の縦断調査を企画し、研究倫理審査を経て調査依頼を開始した。また前年度に実施した横断的な養護施設調査(全国26施設)にて卒所後の追跡調査への登録者に対する5波のウェブ調査の第1回調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)今回の研究の中心テーマであるACEsとPACEsの成人期における心身の健康と社会適応に対する統合的検討をより有効におこなうために、既に長期縦断調査に登録済の一般人口中の家庭サンプルに加えて、小児期逆境体験をより多く有する養護施設在所中の中高生を対象とした縦断調査を企画し、成人期以前での情報を有する卒所後追跡調査のサンプルを確保する目途が立ち、また登録された一部の対象者への卒所後調査を開始できたことは大きな成果であると考えている。 (2)ACEsをより高い精度で測定可能なMACE尺度の日本語版について原作者のチームと共同で開発研究を進め、大規模な(13,149名)調査データの解析結果をもとに、開発研究を進展させることができた。 (3)PACEsの多様なバージョン(成人期版、青少年期版、母親評定による乳幼児期版)の日本語版を原作者とともに開発して信頼性・妥当性検証の調査を完了し、PACEsの生涯発達におけるレジリエンス効果について検討する際の方法論の進展に貢献できた。 (4)ACEsやPACEsについて、災害被害や、貧困/低所得による経済格差、近隣コミュニティによるサポート状況の国内地域差など、日本における現代的な課題に関する付加項目の開発に着手できたことも進捗状況として評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①社会的養護の経験のある成人サンプルと②申請者らが妊娠期・乳児期より長期にわたって縦断調査を継続している一般人口中の成人サンプルの2つのグループを対象とした同一内容のパネル調査を継続する計画を立てている。また、社会的養護サンプルおよび家庭追跡サンプルとの比較をより正確におこなうために、①および②と同年齢層(18歳~40歳)の代表性(性別・学歴・出身地等)を担保した調査会社のモニターを利用した縦断パネル調査を並行的に開始する予定である。また、本邦における小児期逆境体験(ACEs)とその悪影響を防御する保護的・補償的体験(PACEs)との関連性に関する知見を国際発信するため、2024年6月に実施される第27回国際行動発達学会(ISSBD, ポルトガル・リスボン)にて当該テーマでのシンポジウム(招聘)とポスター発表に参加する予定である。令和6年度は、以下の3点について研究を進める: (1)上記①の社会的養護経験者の追跡調査の実施とともに、新たな対象者のサンプリングを継続し初回登録調査をおこなう。 (2)②の家族(子ども・父親・母親)を対象とした長期縦断サンプル(成人期:21歳~40歳の子ども1,031名、親1,696名計2,727名)を対象としたACEs/PACEsと現在の心身の健康度に関連する追跡調査を実施する。 (3)ACEsに関する国際的な尺度である Maltreatment and Abuse Chronology of Exposure: MACE尺度 (Teicher & Parigger,2015)の日本語版の信頼性・妥当性に関する成人対象の大規模調査データについて原作者のチームと合同で解析をおこない、MACE日本語版に関する論文化を進める。また、PACEsについても、前年度に実施した各バージョン(乳児期版、青少年版、成人現在版、PACEs体験年齢測定版)の妥当性検証に関する調査結果をまとめて国際学会で報告し、同時に論文化を進める。
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