Project/Area Number |
23H00088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 13:Condensed matter physics and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井手上 敏也 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90757014)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥48,880,000 (Direct Cost: ¥37,600,000、Indirect Cost: ¥11,280,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥36,140,000 (Direct Cost: ¥27,800,000、Indirect Cost: ¥8,340,000)
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Keywords | 整流現象 / 対称性の破れ / スピン / 励起子 / フォノン |
Outline of Research at the Start |
本研究では、固体における対称性の破れが様々な量子力学的自由度の流れの非対称性にもたらす影響を包括的に研究し、多種多様な量子力学的素励起の整流性を実現すると同時に、その背景にある原理を明らかにすることで非対称量子輸送の物理学の確立と学理構築に取り組む。これまで開拓してきた量子力学的整流現象の研究を大きく発展、拡張することによって、固体中の量子自由度を制御する有望な機能を実現すると同時に、非対称量子流に関する包括的知見や新概念の提案によって物性研究の新潮流の創出を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2次元結晶界面や層状磁性体におけるスピン自由度を反映した整流現象の開拓に取り組んだ。 2次元結晶界面の整流現象開拓では、対称性を制御した界面において円偏光光起電力効果の観測と微視的機構の解明を行った。異なる対称性を持った2次元半導体ヘテロ界面において、対称性が低下して鏡像面が1枚だけ存在するような低対称な構造が実現し、鏡像面に垂直方向に円偏光に依存したゼロバイアス光電流が生じることを見出した。また、磁性電極を用いた光電流測定を行うことにより、観測された光電流がスピン偏極していることが示唆された。さらに、照射光のエネルギー依存性が電子バンドの幾何学的性質によって上手く説明できることを明らかにした。 層状磁性体の整流現象開拓では、ファンデルワールス反強磁性体であるCuCrP2S6の第二次高調波発生(SHG)の研究を行った。SHGの大きさや偏光角度依存性の温度変化を調べ、SHGの大きさと偏光依存性が構造相転移や磁気相転移を反映して変化することを発見するとともに、その起源が電気双極子や磁気双極子起源のSHGであることを明らかにした。また、面内に磁場を印加することでSHGの大きさや偏光角度依存性が大きく変調される様子を観測し、電気磁気効果が整流性に大きく影響を及ぼしていることが示された。さらに、SHGの膜厚依存性を調べ、無磁場下および磁場下のSHGの偏光角度依存性が膜厚に応じて系統的に変化していくことを見出した。この結果は、バルク結晶が持つ鏡映対称性が破れるような薄膜領域の試料では、対称性がバルク試料よりも低下して電気磁気効果やそれを反映したSHGが変調されることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
円偏光光電流効果はこれまで様々な量子物質で報告されているが、本研究では磁性電極を用いた測定も行うことにより、異なる対称性を持った2次元半導体ヘテロ界面において生じている円偏光光起電力効果が、実際にスピン自由度を反映した整流現象であることを示せた点が、当初想定していた以上の成果である。また、2次元結晶ヘテロ界面という非常に制御性の高い物質系で実現できたことの意義は大きい。特に、ゲート電圧によってその大きさや振る舞いを制御できることを示し、スピン自由度を反映した整流現象の制御可能性を実証できた。今後、2次元物質の組み合わせを最適化することで、スピン整流現象の巨大化やより簡便な制御性を実現できる可能性がある。 ファンデルワールス反強磁性体における第二次高調波発生(SHG)は、現在盛んに研究されているトピックスの一つであるが、まだ報告例は限られており、報告されている物質には空気中で不安定な物質も多い。本研究で空気中でも安定なファンデルワールス反強磁性体であるCuCrP2S6がユニークなSHGの振る舞いを示すことを発見できたことは、ファンデルワールス反強磁性体におけるスピン自由度を反映した整流現象の研究を今後加速させていく上で大きな進歩であると考えれられる。また、CuCrP2S6はマイクロ波領域でスピン共鳴を示すことも知られているため、今後スピン励起(スピン波・マグノン)の整流性やスピン励起と格子や電荷自由度の相関によって引き起こされる新しい整流現象の観測も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
固体中の対称性の破れを反映した、スピンや格子等の量子力学的自由度に関連する整流現象の研究を推進する。 異なる対称性を持った2次元半導体の界面において観測されるスピン自由度を反映した円偏光光起電力効果が、同様の手法で対称性を制御した2次元半導体/2次元磁性体界面で生じるかどうかを調べ、2次元半導体の界面において観測された円偏光光起電力効果との共通点や相違点を明らかにする。また、界面における対称性制御の手法を異なる磁気構造を持つ2次元磁性体界面に拡張することで、新奇整流現象の開拓に取り組む。結晶対称性だけでなく磁場方位依存性や磁性の層数依存性にも注意して第二次高調波発生(SHG)や光起電力効果を調べることで、非磁性2次元結晶界面にはないような特有の磁気対称性を反映した整流現象の観測を試みる。また、層状マルチフェロイクスにおけるスピン自由度を反映した第二次高調波発生(SHG)が、対称性を制御することによってどのように変調されるかを調べると同時に、同物質でスピンや格子自由度を反映した光起電力効果が生じるかどうかを調べる。さらに、これら対称性を制御した界面(2次元半導体/2次元磁性体界面や異なる磁気構造を持つ2次元磁性体界面)や層状マルチフェロイクスにおける、スピン励起(スピン波・マグノン)にも着目し、スピン励起自身の整流性やスピン励起と格子や電荷自由度の相関によって引き起こされる新しい整流現象の観測に取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)