Project/Area Number |
23H00107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 知岳 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (70625003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 邦昭 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60543072)
LIU Jia 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (60962016)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥46,540,000 (Direct Cost: ¥35,800,000、Indirect Cost: ¥10,740,000)
Fiscal Year 2024: ¥15,210,000 (Direct Cost: ¥11,700,000、Indirect Cost: ¥3,510,000)
Fiscal Year 2023: ¥13,520,000 (Direct Cost: ¥10,400,000、Indirect Cost: ¥3,120,000)
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Keywords | ミリ波光学素子 / 広帯域反射防止機構 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 初期宇宙 / インフレーション / 広帯域反射防止膜 / ミリ波 / 反射防止技術 / 偏光 |
Outline of Research at the Start |
現代宇宙論・素粒子物理にとって最重要課題の一つであるインフレーション仮説の検証は 、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測によって実験的探索が可能である。提案者らは、CMB偏光観測の実現に不可欠なミリ波反射抑制技術として、世界に先駆けて超短パルスレーザーを用いた超広帯域モスアイ構造の作製技術の開発を進めている。本研究はこの技術をさらに発展させ、インフレーション探索を目指す現行CMB実験および将来計画のための世界最高帯域・高透過率を持つミリ波光学素子の開発を行う。さらに、作製した素子を現行CMB実験に搭載して実際に観測を行い、データ解析を通して原始重力波Bモードを探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
初期宇宙論の探索に向け、宇宙マイクロ波偏光精密観測技術の開発に取り組んでいる。ミリ波光学素子の広帯域反射防止機構の実証では、シリコン基盤を窓材としレーザー微細加工を活用したサブ波長反射防止構造を開発した。これは南米チリのASTE望遠鏡に搭載するDESHIMA2レシーバーに導入され、科学観測に向けたコミッショニングが進行中である。さらに、大気の影響の少ない3つの観測帯域に特化した地上CMB偏光望遠鏡向けの赤外フィルター用の広帯域反射防止機構も開発中であり、概ね加工の条件出しは終了した。今後詳細な光学性能評価を実施する。こうした開発は国際共同研究にて進めており、開発には大学院生や研究員も参加しており、若手研究者の活発な国際共同研究を進める枠組みを実現している。開発の成果は物理学会(4件)、国際学会(1件)で発表を行なっている。またシミュレーションを用いた擬似偏光のCMB偏光観測への影響評価の検討を実施し、その対処方法の初期提案を査読付き論文としてまとめ投稿が完了した。今後の研究として令和6年度は前年度の成果を踏まえて4件の国際学会での発表も決まっている。また、地上望遠鏡搭載のサブ波長反射防止構造の光学的評価や、現行および将来計画CMB偏光観測への応用に向け、設計、製造、評価を進める。並行して、シミュレーションを用いて光学素子の偏光特性要求及び評価結果とCMB偏光観測への影響の関係を対応付ける。現在構築した国際共同研究(米国、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ)を引き続き進め、大学院生の積極的な参加を支援することで若手育成を促す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期宇宙論の物理探索に向けた宇宙マイクロ波偏光精密観測のためのミリ波光学素子広帯域反射防止機構および低温光学素子の保持機構の開発を中心に開発を進めた。ミリ波光学素子広帯域反射防止機構の部分実証してシリコン基盤をミリ波窓材として採用し、表面反射低減のためにレーザーを用いたサブ波長反射防止構造を作製した。この窓は光学評価後に南米チリのASTE望遠鏡に搭載するDESHIMA2レシーバーに提供し、現在この窓を搭載した観測に向けコミッショニング中である。この成果は国際学会であるSPIE Astronomical Telescopes and Instrumentation(2024年6月横浜にて開催)にて発表が採択されている。また、この技術を宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測に適応すべく、地上CMB望遠鏡にて観測が可能な3つの観測帯域に特化した赤外フィルターのための広帯域反射防止機構の開発を進めた。今後、大型光学素子(直径500mm程度)のレーザー加工が可能となる加工ステージの導入を完了した。さらに、加工のための条件出しは概ね終了し、光学評価可能な素子作製へ移行できる段階まで進むことができた。また、従来とは異なるサブ波長構造の配列(六角格子)を持つ反射防止構造の開発も行い国際学会でその成果を発表した。結果として開発成果は国内学会(4回)及び国際学会(1回)で報告を行なった。またシミュレーションを用いた擬似偏光のCMB偏光観測への影響評価の検討を実施し、その対処方法の初期提案を査読付き論文としてまとめた。これらの研究には国際共同研究(米国、オランダ、ドイツ、イタリア、フランス)にて進めている。国際共同研究の機会を通じ、大学院生2名が米国およびイタリアにそれぞれ1週間の出張を行い、開発現状の共有及び共同実験を行なった。これにより若手研究者が国際的研究に主体的に参加する枠組みを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度年の開発成果と6年度に引き続き進めている研究内容に関してSPIE Astronomical Telescopes and Instrumentation(2024年6月横浜にて開催)にて4つの発表を予定している。それぞれ、DESHIMA2に提供したシリコン窓の開発成果報告、CMB地上観測偏光望遠鏡のための広帯域反射防止サブ波長構造の開発、衛星搭載を目指した世界最大広帯域を持つサファイア半波長板のサブ波長反射防止構造、10K以下で動作する光学素子保持のための低温保持機構、について発表を行う。また、これらの成果はproceedingsの投稿を経て査読付き論文に投稿する予定である。特に、概ね完了した地上望遠鏡搭載のためのサブ波長反射防止構造は、条件出しの結果をもとに、光学的な評価(透過率、偏光特性)が可能な小径光学素子の作製を行う。そして、こうした開発成果を現在計画されているCMB偏光観測に直接還元するために、3つのプロジェクト(地上観測望遠鏡用赤外フィルター、地上観測用半波長板、衛星計画用半波長板)を想定した設計、試作、そして評価を実施する。また、国際共同研究体制は引き続き令和5年と同様に実施する。特に、代表的な項目を以下に記す。1)米国ミネソタ大学との共同研究では高出力レーザーを用いた加工の高速化検討を共同研究として進める。2)シミュレーションパイプラインを用いて、光学評価にて得た光学素子由来の擬似偏光によるCMB偏光偏光観測への影響を評価する。
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