Project/Area Number |
23H00244
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 27:Chemical engineering and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 幸治 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (20444101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩槻 健 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50332375)
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30548681)
川野 竜司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90401702)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥46,800,000 (Direct Cost: ¥36,000,000、Indirect Cost: ¥10,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,490,000 (Direct Cost: ¥7,300,000、Indirect Cost: ¥2,190,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,790,000 (Direct Cost: ¥8,300,000、Indirect Cost: ¥2,490,000)
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Keywords | 嗅覚 / スーパーセンシング / 匂いセンサー / 嗅粘液 / バイオミメティクス |
Outline of Research at the Start |
嗅覚器には匂い分子に対する超感受性が備わっており、このスーパーセンシングの分子機構の解明とそれを模したセンサーの実現は、科学における重要課題の一つである。代表者らはこれまでに嗅覚の感受性を調節する分子機構の解析と、嗅粘液を利用したセンサー開発に取り組んできた。本研究では匂いセンサーに適した細胞の開発、粘液分泌細胞を利用した人工嗅粘液の作製と匂い受容における機能解析、そしてこれらをマイクロデバイスや無細胞技術と統合することで嗅覚器の構造と機能を再現し、社会実装も可能な人工的な嗅覚器を構築することを目指す。このような匂いセンシング技術は、早期診断や安否確認など健康長寿社会への貢献が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度ではまず、目的とする嗅覚スーパーセンシングの分子機構解明とその人工的再構築に向け、匂いセンサーの要となるセンサー細胞の作製を行なった。センサー素子となる哺乳類の嗅覚受容体にはこれまで、ヒト胎児腎臓由来の細胞が用いられているが、この細胞では嗅覚の超感受性および高速応答性が再現できていない。そこで異所的に嗅覚受容体を発現する組織由来の培養細胞のゲノムに、種々のcAMPセンサーを組み込んだ細胞株を作製した。さらに受容体N末端のタグ付加により嗅覚受容体の発現効率を改善した結果、様々な嗅覚受容体で匂い刺激によるcAMP濃度変化をリアルタイムに計測可能となった。 嗅覚器の超高感度性には嗅粘液の関与が示唆されており本年度、これまでに作製したセンサー細胞を用いてその機能評価を行なったところ、嗅粘液が匂い感度を改善することを確認できた。そこで人工的に嗅粘液を再現するために、霊長類由来の粘液成分を産生する杯細胞をサル消化管オルガノイドから分化させ、培養液中に分泌させることに成功した。さらに匂いセンサーの基盤技術である、嗅覚器表面で生じる嗅神経細胞と大気中物質の相互作用を人工的に再現するために、ハイドロゲルの微細加工技術を活用し、大気環境下で嗅神経細胞のセンシング機能を長期的に維持可能とする匂いセンサの構築を開始した。これまでにデバイス内で細胞が培養可能であることが確認できている。 以上の技術開発とともに、嗅覚スーパーセンシングの分子機構の解明を目指し、粘液構成物質と匂い物質との電気化学的な相互作用解析も実施した。これまで検討を行っていた哺乳類の粘液構成物質に加え、より精製度の高い粘性構成物質を入手し電気化学的な相互作用解析を行った。その結果、純度の高い物質においても応答増強が観測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度では、匂い応答をリアルタイム計測するための新規のcAMPセンサー細胞を作製した。そのバックグラウンドとなる細胞株は遺伝子導入が困難とされこれまで、嗅覚受容体の解析には全く用いられていなかったが、試薬の検討や嗅覚受容体発現効率の改善により、計画通りにセンサー細胞を作製することができた。また細胞を用いた匂いセンサーの基盤技術となる大気中での細胞の培養に関し、実現可能であることが実証できている。 本年度では嗅粘液が培養細胞の匂い応答を改善することが確認できたため、人工嗅粘液でその機能を再現する研究も開始した。この研究では細胞から粘液分泌を促進させることが大きな目標となっており、本年度ではコリン作動薬による粘液分泌を促す条件検討を開始できた。 粘液構成物質と匂い物質との電気化学的な相互作用解析では、これまでよりも純度の高い粘性構成物質による検討を行い、これまでの粗精製物質と同様に応答増強が確認できた。また粘液構成物質のどの化学構造がより応答増強に影響するのかに関しても検討を行った。 以上の研究推進状況は計画通りであり、順調に推進していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題に達成に向け、今後も嗅覚スーパンセンシングの分子機構の解析および匂いセンサーの基盤技術となる培養細胞や嗅覚器、さらに無細胞システムでの計測技術の開発および、人工嗅粘液の作製と大気中の匂い分子を細胞と相互作用させるための技術統合を目指す。またこれまでの研究活動により嗅覚器には匂いに対する超感受性だけでなく、急速に応答を生じさせる独自の機構が備わっていることがわかった。この高速な時間追従性はセンサーとして不可欠の要素であり、今後はこの2つの嗅覚独自の機能性を標的に、その解明と再構築に取り組む。 具体的な方策として引き続き、培養細胞、動物、さらに無細胞システムも含めた匂い応答を計測・解析するための測定技術開発、培養細胞を用いた人工粘液作製とその機能評価および活性分子の同定、そしてこれらを技術統合し、デバイス上で匂いセンサーの機能を実現するための装置開発を推進する。 以上の嗅覚研究に関する応用展開に加え、その分子機構に関する基礎的知見の解明を目指し、粘液構成物質と匂い物質との電気化学的な相互作用解析も進める。現在までにある程度応答増強に寄与する化学構造の特定が進んできたため、より系統的な応答増強に関連する化学構造の探索を行い、in vivo系との相関に関しても検討を行う。粘液分泌についても薬理学的解析などを進め粘液分泌機構を解析し、粘液回収の効率化を検討する。
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