Project/Area Number |
23H00257
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 28:Nano/micro science and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新見 康洋 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (00574617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 和司 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00623133)
高田 真太郎 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90805144)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥47,970,000 (Direct Cost: ¥36,900,000、Indirect Cost: ¥11,070,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,230,000 (Direct Cost: ¥7,100,000、Indirect Cost: ¥2,130,000)
Fiscal Year 2023: ¥24,440,000 (Direct Cost: ¥18,800,000、Indirect Cost: ¥5,640,000)
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Keywords | 表面弾性波 / 原子層物質 / ダイナミクス |
Outline of Research at the Start |
本研究では、圧電基板上に作製した櫛型(くしがた)電極に高周波電圧を印加することで得られる表面弾性波を、原子レベルに薄い原子層超伝導体・原子層磁性体デバイスに照射することで、原子層デバイス内にフォノン・マグノンなどの素励起を人工的に生成する。これら人工的に生成された素励起を用いることで、個々の原子層デバイスが示す超伝導・電荷密度波・磁性の特性を変調させ、静的な伝導測定で観測する。さらに動的な伝導特性(ダイナミクス)にも着目し、それらを機能化させたデバイス、例えば発振回路の原型の創出を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超伝導・電荷密度波(CDW)・磁性などの特性を示す層状物質を、機械的に剥離して薄膜化し、得られた原子層膜を表面弾性波の励起が可能な圧電基板上に転写することで、表面弾性波を照射可能な原子層デバイスを作製する。表面弾性波の励起により原子層デバイスに人工的に生成されるフォノン・マグノンを用いて、原子層超伝導体・CDW・磁性体の伝導特性を変調させることを目的とする。さらにそのダイナミクスを機能化したデバイスの原型を創出する。これらの目標が達成されれば、既存の表面弾性波技術に原子層薄膜の特徴を取り込んだ新規デバイスへの応用も期待でき、基礎理学の分野のみならず工学の分野に至るまで幅広い分野にインパクトを与えることができる。 本年度は、主に(1)表面弾性波を用いたCDWダイナミクスの制御とその理論モデルの構築、(2)圧電基板LiNbO3上でのパルス表面弾性波の励起、の2つの研究に取り組んだ。 研究代表者である新見は、CDWを示す代表的な物質であるNbSe3を、機械的剥離法を用いて原子層レベルに薄い薄膜を圧電基板LiNbO3上に作製した。さらに、LiNbO3上に櫛形電極を作製し、高周波電場を印加して、表面弾性波をNbSe3薄膜に照射した。その結果、NbSe3薄膜に直接交流電場を加えたものとは大きく異なる伝導特性を得た。この結果は、研究分担者の青山が構築した理論モデルで定性的に説明できることが分かった。 研究分担者の高田は、LiNbO3基板上にパルス状の表面弾性波が照射できるように、櫛形電極を設計し、実際に幅300 psのパルス表面弾性波をLiNbO3基板上で励起することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、圧電基板上に作製した櫛型電極に高周波電圧を印加することで得られる表面弾性波を、原子レベルに薄い原子層超伝導体・原子層磁性体デバイスに照射することで、原子層デバイス内にフォノン・マグノンなどの素励起を人工的に生成することを目的としている。2023年度は、主にCDWが表面弾性波によって、どのように伝導特性が変わるのかを、代表的なCDW物質であるNbSe3を用いて調べた。NbSe3に交流電場を印加して得られるシャピロステップが表面弾性波を照射しても観測され、さらに電場の振幅依存性が、通常の交流電場の場合と異なり、単調増加することを見出した。この結果は、青山による理論モデルで定性的に説明できることが分かった。現在、実験と理論を合わせた内容で論文投稿準備中である。 また青山は、CDWに振動外場を印加することで現れるシャピロステップに着目した。特にシャピロステップの分数次のピークは、通常の交流電場の場合と比べてフラクタル次元が大きく異なることを理論的に示した。以上の成果は、Physical Review B誌(Letter)に掲載された。 さらに次年度以降、表面弾性波を照射によるダイナミクスを研究するために、高田はLiNbO3基板上でパルス状の表面弾性波が照射できるように、櫛形電極を設計し、実際に幅300 psのパルス表面弾性波を励起することに成功して、現在、論文の執筆を行っている。 これらの結果は、当初の計画通りであることから、「(2)計画通りに進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、NbSe3で成果が出ているものを、原子層超伝導体TaSe2や原子層らせん磁性体CrNb3S6、またCDWと反強磁性が共存するCeTe3などに拡張して実験を行う予定である。表面弾性波照射によるヒッグスモードの検出のために、高周波ケーブルを希釈冷凍機に導入し、TaSe2の超伝導ギャップよりも大きなエネルギーをもつ高周波(3 GHz以上)の表面弾性波を照射できるようなデバイスの作製、及び測定環境を整える予定である。さらに、実際の実験に向けて、理論的な考察を行う予定である。 またNbSe3に関しては、理論の方で、分数次のシャピロステップに着目すると、フラクタル性が現れるという結果が得られているため、当初の目的にはなかったが、これを実験で確かめることも計画している。
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