Project/Area Number |
23H00281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 31:Nuclear engineering, earth resources engineering, energy engineering, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 陽一 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (50210729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 晃一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 併任 (60553302)
神戸 正雄 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60705094)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥46,930,000 (Direct Cost: ¥36,100,000、Indirect Cost: ¥10,830,000)
Fiscal Year 2024: ¥15,860,000 (Direct Cost: ¥12,200,000、Indirect Cost: ¥3,660,000)
Fiscal Year 2023: ¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
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Keywords | アト秒 / 極短パルス電子ビーム / 集団イオン化 / 線エネルギー付与(LET) / 短パルス発生 / アト秒電子ビーム / パルスラジオリシス / レーザー変調 |
Outline of Research at the Start |
量子ビームによって誘起される物質中の反応の出発点は、これまでは、イオン化によって生成されるラジカルカチオンと熱化電子とされていた。しかしながら、最近の研究により、出発活性種であるラジカルカチオンと熱化電子の前駆体が発見され、さらにその前駆体のアト秒領域における挙動が、その後の反応経路や最終生成物にも大きく影響することが明らかになってきた。 そこで本研究では、世界で最も短いアト秒(10-18 s)オーダーの高エネルギー電子ビームを発生させ、超高速時間分解分光法「アト秒パルスラジオリシス」を構築し、電子ビームによって引き起こされる超高速反応を直接的に観測し、アト秒領域の量子ビーム誘起現象の解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
アンジュレータ中で電子ビームとレーザー光を、時間的・空間的に重ね合わせることで、特定条件を満たせば電子ビームのエネルギー変調を起こすことができる。これを電子ビームのレーザー変調と呼ぶ。レーザー変調は自由電子レーザー(FEL)の逆過程としても理解することができる。これまで開発したフェムト秒電子ビームパルスと、フェムト秒レーザー光パルスを用いて、フェムト秒電子ビームをレーザー変調し、アト秒領域の密度変調構造をもつ電子ビームパルスを発生させることを目的とした、アト秒電子ビーム発生の研究を行った。 レーザー変調は20周期、周期長6.6 mmのアンジュレータを用いて、800 nmのレーザー光、35 MeVの電子ビームに最適化した。このアンジュレータに、電子ビームパルスとフェムト秒レーザー光を同軸入射した。同軸入射では、シンチレータスクリーン(DRZ-High)を用いてアンジュレータの前後での入射軸の確認を行い、電子ビームとレーザー光の空間的オーバーラップを担保した。また、時間的オーバーラップについては、電気光学結晶(EO結晶)であるZnTeに電子ビームとレーザーを同軸入射し、確認した。具体的には、電子ビームのつくる電場が誘起するポッケルス効果によるレーザー光の偏光回転を、EO結晶透過後のレーザー光強度を偏光子越しにフォトダイオードで検出し、レーザー光の時間遅延を変えながら強度測定することで、電子ビームとレーザー光が同時に入射する条件を実験的に確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アト秒電子ビーム発生技術の基幹技術であるレーザー変調電子ビーム発生には基本的に成功している。レーザー変調電子ビーム発生には、これまで開発した短パルス電子ビーム発生法を用いて、フェムト秒レーザーパルス光をフォトカソードRF電子銃に入射して発生した電子ビームを磁気パルス圧縮器により短パルス化後、短パルス電子ビームをアンジュレータに入射し、アンジュレータ内で電子ビームパルスとフェムト秒レーザー光パルスを時間的・空間的にオーバーラップする。この基礎過程の確立には実験を容易にするため、電子ビームの電荷量を観測しやすい電荷量としているが、アト秒電子ビーム発生には、より少ない電荷量とする予定であり、低電荷量化もすでに技術確立しているため問題ない。シングルバンチの電子ビームパルスのパルス幅測定法としては、すでにマイケルソン干渉計を用いてCTR光を計測する、という手法で確立している。 パルスラジオリシス測定については、開発したアト秒電子ビームをもちいて、パルスラジオリシスを実行することができる。しかしながら、アト秒電子ビームは電荷量が小さく、従って、電子ビーム照射で発生する過渡種の量が少ないため、吸収分光による過渡種の観測には困難が予想される。ただし、集団イオン化現象が実現した場合、発生する過渡種の量は莫大となるため、集団イオン化現象の検証としては実行可能である。 集団イオン化現象ではイオン化が特徴的な空間分布となることが予想される。この空間分布の観測には、イオンビーム照射時にブラッグピークを観測することのできるナノクレイを用いたゲル線量計を用いることを予定しおり、本年度はこのゲル線量計の調製技術を習得した。
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Strategy for Future Research Activity |
アト秒電子ビームについては、レーザー変調方式による電子ビームエネルギーのエネルギー変調がかかったことを確認できたため、レーザー変調電子ビームのバンチングによる短パルス化が起こっていることを確認する。バンチングはベロシティバンチングとなると予想されるため、アンジュレータ出口からの距離を関数としてバンチング状況を調べる。具体的には、電子ビームの電荷量の二乗に比例するCoherent Transition Radiation(CTR)強度の依存性や、電子ビームのパルス幅に依存するCTRの発光スペクトルを距離の関数として調べる。 また、パルスラジオリシス測定により、集団イオン化現象の実証実験を行う。過渡種の吸光度の電子ビームの電荷量依存性を調べることと同時に、レーザー変調の有無により比較を行う。つまり、磁気パルス圧縮で実現可能な1fs程度の電子ビームパルス幅では集団イオン化現象は起こらないと予想されるため、観測される吸光度は電荷量に線形となる。一方で、電子ビームをレーザー変調電子ビームに切り替えることにより、アト秒の電子ビーム構造を付与し、集団イオン化現象が起これば、吸光度が電荷量に非線形な依存性を示すことになるため、集団イオン化現象の実証が可能であると考えている。 また、集団イオン化現象はイオン化の空間分布が特徴的な空間分布となることが予想されている。この空間分布を可視化するため、線量のダイナミックレンジと空間分解能の高いナノクレイを用いたゲル線量計を用いて、これを可視化することを予定している。
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