Project/Area Number |
23H00285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (60270469)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥47,450,000 (Direct Cost: ¥36,500,000、Indirect Cost: ¥10,950,000)
Fiscal Year 2024: ¥13,780,000 (Direct Cost: ¥10,600,000、Indirect Cost: ¥3,180,000)
Fiscal Year 2023: ¥19,890,000 (Direct Cost: ¥15,300,000、Indirect Cost: ¥4,590,000)
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Keywords | アロステリー / ラマン分光法 / タンパク質ダイナミクス |
Outline of Research at the Start |
タンパク質は人工の分子では成し得ない高度な機能を有する。したがって、タンパク質を理解することは生命現象の理解のみならず、高度な機能性分子の創成に重要な知見を与える。タンパク質の機能発現機構を理解するうえで重要な点は、構造変化によって複数の機能部位が互いに連動していることにある。この連動的構造変化を可能にする鍵として、タンパク質構造の高い空間充填が挙げられる。本研究では、タンパク質構造の稠密性を、アミノ酸置換および非天然補欠分子族の再構成によって操作する。これらの操作が、タンパク質の連動的構造変化および機能活性がどのように影響するかを定量的に調べ、稠密性の意義を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の機能発現機構を理解するうえで重要な点は、構造変化によって複数の機能部位が互いに連動していることにある。この連動的構造変化を可能にする鍵として、タンパク質構造の高い空間充填が挙げられる。2023年度は光駆動イオンポンプタンパク質とガス分子貯蔵タンパク質を中心に、タンパク質機能発現における構造稠密性の意義について研究した。これにはわれわれが開発した高感度の時間分解共鳴ラマン分光装置が大きく貢献した。従来のプロトンポンプタンパク質とは対照的に、細胞外側から細胞内側へのプロトン輸送能を持つシゾロドプシンの輸送方向を決定するメカニズムを解明した。さらに、このメカニズムにおいて、発色団周囲の稠密性が熱反応による異性化過程を促進することを明らかにした。この成果は、プロトンの輸送方向を決定するメカニズムを明らかにしただけでなく、それが構造稠密性によって実現していることを明らかにした点に大きな意義がある。稠密性の特徴は発色団の捻れ度にも発見された。シゾロドプシンの比較研究から、シゾロドプシンの発色団構造は周囲の稠密性と水素結合強度のバランスによって決定していることを明らかにした。 2023年度は祖先型タンパク質へも研究を新たに発展させた。ゲノムデータの蓄積とその統計操作技術の進展によって、祖先型タンパク質の配列推定法が発達した。そこで、祖先型グロビンタンパク質の構造を現存種タンパク質のそれと比較し、ヘム周辺構造に稠密性が進化の過程で保たれていることを明らかにした。さらに稠密性の差がリガンド結合能や酸素結合の安定性に差を生み出していることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
内向きプロトンポンプタンパク質であるシゾロドプシンについて、共通するプロトン輸送機構を明らかにすることができた。この機構には発色団周囲の構造稠密性が本質的な役割を果たしていることを示し、構造稠密性がタンパク質機能を生み出すことを実証することができた。さらに、祖先型グロビンタンパク質についても現存種タンパク質と同程度の構造稠密性を持つことを明らかにし、構造稠密性はタンパク質進化の過程で保たれていることを実証した。以上のように、現存種タンパク質だけでなく祖先型タンパク質にも構造稠密性に関する研究を展開できたことは当初の計画を越えた進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
機能発現のトリガーとなる変化からそのキーステップに至る過程において、複数の機能部位に起きる構造変化を多面的に観測し、複数の機能部位間の変化の連関を明らかにする。明らかになった連動的な構造変化とタンパク質の機能活性(プロトン輸送活性や酵素活性)に対して、構造稠密性がこれらにどのような影響を及ぼすかを定量的に調べる。 今後は、「稠密性を回復すると、構造変化と活性は回復するか?」および「共有結合を欠いてもタンパク質は機能するか?」について調べる。前者については、同定された稠密部位について、アミノ酸置換によってできた隙間を、補欠分子族の改変によって補い、その結果、連動的構造変化と機能活性が回復するかを調べる。例えば、補欠分子族側鎖のメチル基をエチル基に置換することによって、アミノ酸置換によってできた、ポケットの隙間を補填する。これは、アミノ酸残基から補欠分子族にメチレン鎖一つ分を移すことに対応する。補填の結果、アミノ酸置換によって一旦低下した連動的構造変化と機能活性が回復するかを検証する。後者については、補欠分子族とポリペプチド鎖との間の共有結合を欠損した変異体を調製し、野生型と比較する。共有結合は欠いても稠密性さえ保たれていれば、野生型と同様の連動的構造変化と機能活性が保たれるかどうかを調べることによって、構造稠密性が複数の機能部位を連動させる要因であるという仮説を検証する。
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