Project/Area Number |
23H04980
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
1110:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | 鳥取市立東中学校 |
Principal Investigator |
江谷 和樹 鳥取市立東中学校, 公立中学校教諭
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥470,000 (Direct Cost: ¥470,000)
Fiscal Year 2023: ¥470,000 (Direct Cost: ¥470,000)
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Keywords | 大衆演劇 / 口立て / 中学校音楽 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、中学校音楽科における日本の伝統芸能の指導について、大衆演劇の「口立て」稽古がもたらす芸の創発プロセスに着眼した教材開発を行う。大衆演劇の伝承は、詳細な台本に依らず、「口立て」稽古と呼ばれる独自の口頭伝承が採られる。既成の演目をそのまま伝承するよりも、様々な「型」を上演の場で臨機応変に再構成し、演者の個性を生かした演劇が目指される。本研究により、生徒に伝統芸能のもつ豊かな創造性を実感させるとともに、これまで学校音楽教育で顧みられることが少なかった大衆芸能文化への視点を萌芽させる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中学校音楽科における日本の伝統芸能の指導について、大衆演劇の「口立て」稽古がもたらす芸の創発プロセスに着眼した教材開発を試みる教育実践研究である。大衆演劇は江戸時代の歌舞伎を起源とする娯楽性を重視した演劇で、芝居の伝承過程では台本を使用せず「口立て」稽古と呼ばれる独自の口頭伝承が行われる。「口立て」の思考法は既成の演目をそのまま伝承することを目的とせず、演者自身がこれまでの経験で習得した所作や台詞の伝統的な型を、上演の場の状況に応じて臨機応変に再構成し、個性を付加させた新たな芸として創発することをよしとするフレキシブルなものである。 研究の結果、次の3点が明らかとなった。第1に、口頭による伝承は、あらかじめ決められた筋書きよりも演者の個性を優先させ、演者に身体化された演劇要素を型として組み合わせることで、その人独自の芸が即興的に表現できること。第2に、上演の場に応じた臨機応変な台詞まわしと所作表現を可能にし、観客との積極的な相互作用を誘発することで、演者と観客との一体的な関係性を醸成できること。第3に、「口立て」は伝統音楽の伝承に用いられる「唱歌(しょうが)」との共通性がみられ、要素に切り分けず模倣を通して身体まるごと学ぶ学習法の経験につながることである。 大衆演劇は、歌舞伎から受け継いだ古典的な口上表現と舞台構成法を基盤としながらも、演出や芝居展開では独自の変容が進み、現代の大衆が受け入れやすい形態に進化している。本研究を通して、大衆演劇は現在を生きる中学校の生徒が、伝統芸能のもつ豊かな創造性を学ぶための入り口として、有効な教材であることが明らかとなった。
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