Project/Area Number |
23H05461
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section D
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
解良 聡 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (10334202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00585127)
福谷 圭祐 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (10706021)
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Project Period (FY) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥197,080,000 (Direct Cost: ¥151,600,000、Indirect Cost: ¥45,480,000)
Fiscal Year 2024: ¥59,280,000 (Direct Cost: ¥45,600,000、Indirect Cost: ¥13,680,000)
Fiscal Year 2023: ¥30,420,000 (Direct Cost: ¥23,400,000、Indirect Cost: ¥7,020,000)
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Keywords | 光電子分光 / 電子構造 / 多体効果 / 第一原理計算 / 分子結晶 |
Outline of Research at the Start |
分子材料において理論では取り扱い不能な現象が報告されている。その要因として柔らかな物質特有の電子と振動の強い結合性とその階層性が見え始めてきた。高度に配列制御した分子結晶等を試料とし、最先端の光電子イメージング計測と大規模理論シミュレーションを駆使することで、機能を司る「分子の形」を新たな視点で評価する。高電気伝導・高熱電変換分子材料などのメカニズムを理解し、革新的な分子材料開発の道を切り拓く。
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Outline of Annual Research Achievements |
分子材料において既存の理論では取り扱い不能な現象が報告されつつある。その要因のひとつとして柔らかな物質特有の強い電子―フォノン(振動)結合とその階層性が見え始めてきた。本研究では電子と振動の結合系である古典的な準粒子ポーラロンに「分子材料の新奇構造学」へ誘うための階層性描像を新たに与える。その根拠となる実験データの取得による理論モデル提言が最大のミッションであり、高度に配列制御した分子結晶や薄膜界面の試料作製が第一ステージとなる。初年度は、金属基板上に成膜したクラウンエーテル分子の単分子層膜を結晶化させ、コバルト原子の添加による二次元ネットワークの自己組織化膜の作製と構造評価を行なった。また分子単結晶の二次元電子構造の精密な温度依存計測に世界で初めて成功し、電子フォノン結合に関する新規知見の獲得に成功している(投稿準備中)。また次世代型光電子運動量顕微鏡の装置開発を進め、世界初となる2つのビームラインからの放射光の照射実験が可能となった。次年度以降に分子トモグラフィー実験を実施し、軌道定量解析によるオービトロニクスへの足掛かりを掴む準備となる。電子構造の精密測定に向けて、当初計画ではラボ設置の光電子分光装置にて試料のクオリティ確認と電子構造評価の一端を進める予定であったが、最近開発された既存制御電源システムの機能高度化により高効率スペクトル計測が実施できる見込みとなったため、一部計画を変更して当該設備を導入した。本導入により、電子構造計測におけるノイズレベル低減かつ短時間掃引が実現し、研究計画の遂行に効果的であった。また博士研究員を秋季から1名雇用し、光電子運動量顕微鏡による研究推進にむけた人的強化を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高度に配列制御した分子薄膜界面の試料作製が第一ステージとなる。初年度は、金属基板上に成膜したクラウンエーテル分子の単分子層膜を結晶化させ、コバルト原子の添加による二次元ネットワークの自己組織化膜の作製と構造評価を行い2論文を発表した(J. Phys. Chem. C, J. Mater. Chem. C)。また分子単結晶の二次元電子構造の精密な温度依存計測に世界で初めて成功し、電子フォノン結合に関する新規知見の獲得に成功している(投稿準備中)。また次世代型光電子運動量顕微鏡の装置開発を進め、世界初となる2つのビームラインからの放射光の照射実験が可能となった (J. Synch. Rad.)。今後、世界初となる直入射光源による光電子強度の定量解析が実施できる。分子トモグラフィー実験のモデル計測として金基板上のペリレン単分子層膜の実験により、正孔ドープ準位の軌道分布データを取得した(eJ. Surf. Sci.)。一方で、光電子運動量顕微鏡のスピン分解機能の開発が複合的な装置トラブルにより遅れたため、本装置による実験時間が極めて限定的であった。博士研究員を秋季から1名雇用し、光電子運動量顕微鏡による研究推進にむけて人的強化を行なった。そのほかに、高配向分子膜の条件探査の予備実験は順調に進んでおり、次年度以降に順次、二次元電子構造評価へと発展させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
分子トモグラフィー実験による軌道定量解析に向けた試料作製の条件探査の実験はチーム全体で継続する。複数の候補システムを想定する。クラウンエーテル系自己組織化単層膜、トポロジカル絶縁体基板と配向キラル分子単層膜、層状化合物上の強アクセプター分子単層膜の各種界面の構造探査を進め、高い結晶性の単層試料が確認され次第、精密な二次元電子構造評価を行う。4月から着任した博士研究員により強化する。また分子単結晶の電子フォノン結合計測の2例目の実験を狙う。N型有機半導体あるいは有機超伝導体の電子構造計測を目指す。後期から新たに3人目となる博士研究員を雇用する予定である。共用設備である次世代型光電子運動量顕微鏡装置を用いた実験は、放射光施設の運用制度上、利用できる時間に限りがある。そこで光電子運動量顕微鏡の補完実験を目的とし、、増員スタッフとともに既光電子分光装置の改良を行い、研究推進を強化する。電子レンズ系に新たにディフレクタレンズシステムを組みこむことにより、広波数空間の二次元電子構造計測が可能となるため、2024年度前期に導入計画としている。本機種の導入により、電子構造計測における二次元短時間掃引による高効率計測と定量計測が実現するため、研究計画遂行上で極めて効果的である。
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