礼経の「記」としての『礼記』諸篇による初期礼学思想史の再構築
Project/Area Number |
23K00049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
末永 高康 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (30305106)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 『儀礼』 / 『礼記』 / 『大夫食礼』 / 礼記 / 儒家思想 / 先秦思想 / 礼学 |
Outline of Research at the Start |
『礼記』諸篇の内、『儀礼』諸経の解説に当たる「礼の記」としての諸篇は、思想史を構成していく資料として従来ほとんど利用されることがなかった。曾子問、喪服小記、大伝、雑記、喪大記、問喪、服問、間伝といった礼経を補完する記述を残す諸篇や、冠義、昏義篇等の礼経の義を説く諸篇がこれに当たる。これら諸篇に見える礼記述の相互関係を分析しながら、その背後にある礼学および礼思想の展開を明らかにすることによって、これらの諸篇が形成された時期のより完備した儒家思想史を構築していく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は主として次の3点にまとめることができる。(1)礼経と記の成立についての従来の研究を総括し、今後の研究の方向性を見定めること。(2)2023年11月に公開された新出土資料『大夫食礼』『大夫食礼記』についての初歩的な分析を行い、この新資料が礼経と記の成立について投げかける問題について明らかにすること。(3)『礼記正義』奔喪篇の訳注作業を行うこと。 (1)については、研究発表・学会発表欄に記した、国内外における講演・発表を通じて、『儀礼』の「経」「記」を新たに区分し直すことの重要性、『儀礼』の「記」の延長線上に『礼記』諸篇を位置づけることの重要性を再確認するとともに、礼記述の完備化の過程として礼経と記の成立をとらえていく方向性を示した。 (2)の二資料は『儀礼』の「経」「記」に類した戦国時代の文献としては、初めての出土例であり、本研究において極めて重大な意味を持つ。その初歩的な分析として、『大夫食礼』もまた「経」「記」に分かれ、その作者を異にすると考えられること、『大夫食礼』が主客を取り次ぐ「客者」に注目して礼を記述するのに対し、『大夫食礼記』は給仕役に注目して礼を記述しており、その作者を異にすると考えられること、『大夫食礼』「経」の記述は、『礼記』雑記篇に残された諸侯弔礼の記述に類似しており、その記述の特徴から、『儀礼』の諸「経」よりも遅い成立であると考えられることを明らかにした。このことは、『儀礼』の諸「経」の成立が、戦国中期以前に遡り得ることを示すものであり、これまで伝世の資料による研究では、明らかにすることができなかった『儀礼』諸「経」の成立の絶対年代の下限を明らかにするものである。 (3)の訳注作業については、その成果の一部を研究発表・雑誌論文欄に記した雑誌上で公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において僥倖と言えるのは、2023年末に『清華大学蔵戦国竹簡(13)』が刊行され、そこに『儀礼』の「経」「記」と類似した戦国資料としては初の出土例となる『大夫食礼』『大夫食礼記』が含まれていたことである。これは今本『儀礼』には含まれていない、いわゆる佚礼であるが、今本『儀礼』公食大夫礼と密接な関係を有しており、今本『儀礼』の「経」「記」の成立過程を知る上で極めて重要な資料である。 まだ初歩的な分析しか行い得ていないが、それでも、「研究実績の概要」欄に記したような知見が得られており、特に、伝世文献だけはその推定が難しかった、『儀礼』諸「礼」の成立の絶対年代について大きな手がかりを与えていることは、本研究を大きく推進させるものである。 また、関連する伝世資料の分析も予定通り進められており、『礼記正義』の訳注作業も予定通り進められている。 よって、僥倖に支えられた部分は大きいものの、(1)当初の計画以上に進展している、との判断を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新出土資料『大夫食礼』『大夫食礼記』の分析をさらに進めるとともに、そこで得られた知見をもとに、伝世の資料と、従来の研究の再検討を行い、より確度の高い、礼経と記の成立史を組み上げていく。 『大夫食礼』の場合は、その「経」「記」の作者を異にすると考えられるものの、戦国期の資料において、すでに「経」「記」がひとまとまりのものとされて流通していたという事実は、今本の『儀礼』を構成する諸「経」がすべて単行していたと仮定することに対する反省を促すものである。特に、「経」とは異なる状況における礼の違いを記した「間接的な記」は、「経」の記述の内に組み込むことが困難なものもあるから、「経」が成立すると同時に、その「間接的な記」も記され、両者が一体のものとして流通していた可能性がある。申請者の従来の研究においては、「経」と「記」の成立にはタイムラグがあることが前提とされていたが、「経」に接続する「間接的な記」については、それが「経」と同時に成立していた可能性を考慮して分析する必要が生じてきたわけである。次年度においては、特にこの可能性を考慮した場合に、『儀礼』各「経」の成立の相対的な先後についての従来の議論にどれだけの修正が必要になるかを検討し、その検討結果と『大夫食礼』『大夫食礼記』の与える情報を組み合わせながら、礼経と記の成立についての研究を進めていく。 また、『礼記正義』本喪篇の訳注作業についても継続して進めていく。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)