Project/Area Number |
23K00096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
折井 善果 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (80453869)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | キリシタン / 隠匿 / dissimulation / イエズス会 / 適応主義 / 偽装 / Dissimulation / 日本キリスト教史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、キリシタン時代のキリスト教迫害下において、信徒および宣教師らが行った信仰の「隠匿Dissimulation」行為を正当化するべく、国内外の司祭・神学者によって形成された、「隠匿の神学」を解明する(「隠匿」は「偽装」と和訳されることもある)。彼らが信仰の「隠匿」を正当化する根拠として掲げる当時のカトリック倫理神学者・教会法学者の意見を、度重なる改編の経緯に注意を払いつつ文献学的手法で整理し、意見の正当化の過程に表出する解釈やレトリックの特徴を探る。これにより、法と福音という絶対的な二項対立を巧みに包摂してきたカトリック=キリスト教世界の精神性の実証的な理解を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究一年目となる当該年度は、先行研究の整理と、リサーチメソッドの探索、および国内外の研究者との意見交換に多くの時間を費やした。中でもとりわけ「隠匿」の概念を擁護し、近世カトリック教会法における規範意識(Normative knowledge)の形成に大きな役割を果たした教会法学者マルティン・デ・アスピルクエタに関連する研究プロジェクトへの継続的な参加を通じて、多くの示唆を得た。また、「隠匿」が海外宣教において、具体的にいかなる事例において適応されうるかを検討した、ゴアのイエズス会の事例の考察にも着手することができた。「隠匿」をある程度許容する方向でまとめられたこのインドの事例は、日本宣教を主導した同会巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノの「隠匿」をめぐる見解との共通性がみられることから、「隠匿」はキリシタン時代の日本を越えた、より広い視野で検討されるべき概念であるとの理解に至った。また、「隠匿」は、宣教の妨げになりかねない教義をとりあえず広めないという、宣教方針を意味する一方で、危機的状況において宗教的アイデンティティーを隠すという意味にも拡大して用いられた。これが、クルアーンにおける「タキーヤtaqiyyah」の教えに類似するという指摘は、多くの来日宣教師の出自であるイベリア半島で生じた、イスラーム教からキリスト教への強制改宗と、それによって生じた「隠れ」の実践という興味深い相関性を、本研究に提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内外の関連する研究者との意見交換が、予想以上に進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
①宣教師による「隠匿」の思想的源泉について、②宣教地における「隠匿」理論の形成過程について、に大別して、今後の研究を進めていく。①については、マルティン・デ・アスピルクエタに加え、マヌエル・サら16世紀のカトリック倫理神学者の著作をさらに読み進め、「隠匿」の神学的語義の形成過程を詳しく検討する、②については、海外宣教における「隠匿」の是非をめぐる議論(主にゴア)を検討する。具体的にはゴアの神学者フランシスコ・ロドリゲスを想定している。上記に直結する海外での研究発表が現時点で決定している。
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