身体計測の思想史:生政治の時代における断片化する身体と虚構的な身体イメージの行方
Project/Area Number |
23K00101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
橋本 一径 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70581552)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 西洋思想史 / 身体論 / 服飾史 / 写真史 / サイズ / 身体計測 / プロポーション / 科学史 / 生政治 |
Outline of Research at the Start |
本研究が明らかにしようとすることは、以下の2点に要約できる。①衣服のサイズの歴史を中心とした身体計測の歴史をたどり直し、その歴史が、身体を分断する数値が規範として機能し始める過程であったことを明らかにする。②フーコーの「生政治」をめぐる議論に、「身体イメージ」の議論を接続し、写真のイメージが、西洋の法的主体の虚構性を現代において担保してきたことを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、西洋において人間のアイデンティティの基盤がイメージから数値へと移り変わる過程を具体的に跡づけようとするものである。そのために本年度はまず、西洋における自己イメージとして重要な役割を果たしてきた写真の歴史に着目し、単著論文である「「「産業的ドグマ空間」における神話的イメージとしての写真」と、「最初で最後の写真論? ロドルフ・テプフェールの「ダゲール板について」(一八四一)をめぐって」の2本を上梓した。 また、夏季および春季の長期休暇を利用して、フランス国立図書館にて、19世紀の服飾史や人類学史関係の資料を渉猟し、人体のサイズの計測方法や意味の変化をたどった。この調査の成果をまとめた単著の執筆を2024年度中に終え、2025年度中の刊行を目指している。 さらには、上述の写真をめぐる研究と、身体計測の歴史の研究を結びつける試みとして、口頭発表「鏡・写真・数値ーー「私」を制定するイメージと人文学」を行った。この口頭発表を収録した冊子が2024年3月に刊行されている。 本研究の準備となる身体論的な研究の一環として参加したシンポジウム「ドーピングとは何か」が、『スポートロジイ』第5号に収録され、2024年3月に刊行された。 また、2023年8月に刊行された『表象』第17号には、イラナ・ロウィ「黙殺された身体? 女性の身体をめぐる知と無知の同時生産に向き合うフェミニストたち」の翻訳と解説を掲載した。この論文はフランスの身体論・無知学の最近の展開の一端を示すものであり、医学が女性の痛みを軽視し続けてきた構造を明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は主として以下の二点における展開が計画されている。①服飾史におけるサイズの歴史の調査。②写真のイメージ人類学的考察。2023年度はとりわけ②について、2本の論文を上梓するなど、順調な展開を遂げることができた。 ①にかんしては、夏季および春季の休暇期間を利用したフランス国立図書館における調査において、19世紀の服飾雑誌の悉皆調査を行った。その過程で、他では閲覧の困難な19世紀末から20世紀初頭の、「サマリテーヌ」や「ベル・ジャルディニエール」といったデパートのカタログに着目するアイデアを得て、当時の既製服やセミオーダーの衣服において、寸法の問題がどのように解決されていたのかについて、多くの知見を得ることができた。さらには、「オーバーサイズ」という概念が20世紀初頭に出現してきた事実から、サイズの問題を「ダイエット」の問題に接続する視角を得ることができ、医学史などとも関係する思想史的な見取り図を切り開くことができた。これらの成果は単著として2025年度中に刊行することを目指している。 また、本研究の理論的な土台のひとつであるアラン・シュピオの著作『数によるガバナンス』を翻訳刊行することも、本研究の計画の重要な一部をなしているが、2023年度は出版社との間でこの訳書の刊行について正式に合意に達することができ、翻訳作業に着手している。2025年度中には刊行の見通しである。 以上のように本研究は、研究計画における①と②の両面において、順調に進展することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した研究計画の①および②のうち、①については、2023年度に十分な資料調査を行うことができたため、単著として発表するための準備を続ける。すでに刊行元は決まっており、執筆の時間を確保することは特に学期中は困難を伴うものの、大学院の演習において学生に本研究の成果の一端を発表し、意見をもらうことにより、執筆を計画的に進めることができると考えている。また、補足的な資料調査のために夏季および春季の休暇期間中にフランス国立図書館を訪れ、並行して執筆も進めたい。 また、すでに着手しているアラン・シュピオ『数によるガバナンス』の翻訳を、引き続き進めて、今年度中には終わらせ、来年度の刊行を目指したい。 研究計画の②については、これまでに執筆した写真史関係の論文を集めて、単著として発表することを予定している。今年度はそのために必要な、過去の論文の加筆や修正などの作業を進めたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)