Project/Area Number |
23K00128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大愛 崇晴 同志社大学, 文学部, 教授 (70587980)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | タルティーニ / 音楽理論 / 西洋音楽史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、西洋におけるピュタゴラス派以来の伝統的な数学的音楽理論、すなわち数比計算に基づく音程の原理的な考察が、18世紀啓蒙時代の和声理論にどのように受容されたかを、18世紀イタリアのヴァイオリン奏者・作曲家ジュゼッペ・タルティーニ(1692-1770)の和声理論の分析を通じて検証するものである。さらに、タルティーニの活動拠点であったパドヴァの知識人やフランスのフィロゾーフたちによるタルティーニ理論に対する同時代の評価を検証し、数学的音楽理論の伝統と受容という観点から、彼の理論の歴史的位置づけを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、18世紀イタリアのヴァイオリン奏者・作曲家のジュゼッペ・タルティーニ(1692-1770)による理論的著作を対象として、その全体像を読み解くとともに、古代ギリシア以来、西洋音楽理論の中核を成してきた音程比理論の系譜の中に彼の理論がどのように位置づけられるのかを明らかにすることを大きな目標としている。研究期間の初年度にあたる2023年度は、まずタルティーニの理論体系を包括的に把握すべく、彼の理論的主著である『調和の真の知識に基づく音楽論』(1754年、以下『音楽論』)及び『ディアトニック類に含まれる音楽的調和の原理についての考察』(1767年)の読解・分析に取り組んだ。読解自体には目標達成に近い進捗があったものの、多くの先行研究が指摘する通り、タルティーニの記述はとりとめなく、言葉遣いも決して明瞭ではないため、その十全な理解には多くの困難が伴った。他方で、昨今海外ではタルティーニをめぐる歴史的文献の基礎研究は着実に進展しており、2020年にはGiorgia Malagoによってタルティーニの現存する書簡の批判校訂版が刊行された。今年度は、タルティーニの出版された理論書とともに、この研究成果を利用して彼の書簡の内容も合わせて検討することで、彼の和声理論体系の構築の過程を検証する作業にも取り組んだ。その中で、音程比理論における協和音と不協和音の差異をめぐるタルティーニの議論のなかに、音楽理論史的に重要な論点を確認する見通しを立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前項にも記した通り、本研究課題が対象とするタルティーニの文章は言語レベルで読解がきわめて困難である。個々の単語について、Grande Dizionario della Lingua Italianaのような大規模なイタリア語辞典を参照してその意味を確定していく作業が不可欠であり、そのために多大な時間を費やさざるを得なかった。また、内容の理解に際しては、必ずしも現在の楽典の知識が適用できないケースが多々あり、同時代の他の著者による理論書やそれに関する先行研究を逐一確認する必要にも迫られた。このような研究内容そのものに起因する困難に加え、所属機関における通常業務等と研究遂行のそれぞれにかけることができる時間配分が当初の目論見通りにはいかなかったこともあり、今年度は具体的な研究成果を発表するには至らなかった。その意味で本研究課題の進捗状況は遅れていると認めざるを得ない。とはいえ、研究を遂行する中で、今後の具体的な研究成果につながりそうな重要な論点をタルティーニのテクストに見出すことができた点については、一定の進捗があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、まずこれまでにタルティーニの理論書および書簡の読解・分析から得られた新たな知見を学会発表および学術論文において公表することが挙げられる。そのうえで、タルティーニが構築した理論体系に対する同時代の反応を検討する。具体的には、タルティーニとボローニャのマルティーニ神父との間でやり取りされた書簡の検討から、後者が前者の理論体系に対してどのように評価しているかを確認する。また、タルティーニの理論体系が同時代のフランスで紹介されていることは周知の事実である。そこでダランベールが『百科全書』において、またJ. J. ルソーが『音楽辞典』において、それぞれどのようにタルティーニの理論体系を紹介・評価しているかを確認する。さらにJ. A. セールによるタルティーニ『音楽論』への批判の内容を検討し、それに対してタルティーニが反論のために刊行した著作『ジュゼッペ・タルティーニの返答:ジュネーヴのセール氏による著者の『音楽論』の批判に対して』(1767年)の読解・分析を行う。以上の手続きにより、タルティーニの和声理論体系が同時代の音楽理論の世界においてどのように評価されていたのかを包括的に把握することを目指す。
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