Project/Area Number |
23K00135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
増野 亜子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50747160)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 場所 / 空間 / 相互作用 / 伝統芸能 / 音 / インドネシア / 音楽 / 芸能 / 身体 |
Outline of Research at the Start |
本研究では主にインドネシアでの芸能実践に関する現地調査と文献調査に基づき、複数の地域・ジャンルの事例を比較考察して「場所」と芸能の相互作用を明らかにする。 現地調査では音楽や舞踊の「本番」上演だけでなく、上演前の準備、稽古や学習、楽器や衣装の保管等も含めて、芸能実践を生み出す多様な「場所」の事例を調査し、空間の属性(野外/室内、物理的構造等)、宗教的・社会的な場所性(聖俗、公私、歴史的・政治的文脈性等)と、人々の身体(演奏・舞踊・移動等)と音の関係を明らかにする。また研究者自身が演奏に参加して場の生成を身体的に経験し、現地の実演家と協働・対話することで新たな知見を得ることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
初年度は1か月の現地調査(インドネシア、バリ島)と文献調査を実施し、研究成果として共編著書1点、国際学会での論文発表1本を発表した。 2024年3月にインドネシアバリ島ギャニアール県、タバナン県、カランガスム県及びデンパサール市において(1)寺院、個人宅、大学における伝統芸能の上演及び稽古の観察と記録、(2)伝統音楽家、声楽家、舞踊家へのインタビュー、(3)伝統楽器クンダン(太鼓)とグンデル・ワヤン(鍵盤楽器)の演奏技能の習得を行い、複数の性質の異なる空間での演奏事例を観察・調査した。その場の一部として演奏や練習に参加したり、あるいは観察や記録を行う自分の身体と、芸能者を中心とする他の人々の相互作用の諸相を、実践を通して体験し、場所の属性が音によってどのように経験されるかを考察し、将来の論考の調査資料とした。 文献調査では今年度は特にサウンド・スタディーズの先行研究を主に精読し、民族誌的な調査とサウンド・スタディーズの視点をリンクする方法論や理論的枠組みについて継続的に考察した。その一部は、先行研究の書籍紹介という形で今年度中の公表を予定している。 また研究成果として共編著『コンクール文化論―競技としての芸術・表現活動を問う』を出版した。本書は一般読者を対象に「音楽を競う」行為と競うための場の成立について複数の事例から考察するもので、担当章ではバリ島の伝統音楽競技会をとりあげ、「競う」という目的に特化した「場」の成立が、音楽実践や演奏のありかたに与えた長期的な作用作用を論じた。またスルタン・イドリス教育大学主催の第五回国際音楽芸能会議では、バリの伝統音楽グンデル・ワヤンの教育と継承が行われる現代的な空間「サンガル」をとりあげ、指導者の自宅という空間の社会的・物理的属性と、そこでの教育実践の関係性を論じた。この他に2024年度に発表予定の論文3本の執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では2023年度に準備を進め、2024年度に実施予定であったインドネシアからの芸能実践者招聘事業の準備がやや遅れている。2023年度前半に予定通り企画を練り、2024年度後半の実施を目標に、バリの音楽家イ・マデ・スバンディ氏と具体的な調整・検討・交渉に入っていたが、スバンディ氏が2023年秋に急逝されたことで、企画が白紙に戻った。その後、他の音楽家に招聘を打診をし、承諾を得て再度具体的な計画を立て始めたところである。この事業は音楽家個人の専門性や方向性に合わせる必要があり、来日する音楽家の変更は企画全体の見直しを必要とするため、この事業の進行は当初の計画よりやや遅れている。しかし現在2025年度末の実施を目指して、企画を進めており、年度内に後れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究としては主に次の3点を課題とする。(1)バリの人々の伝統的な空間認識や芸能活動の関係に関する調査(現地調査)(2)芸能者が経験する場所性にもとづいた創作及び演奏活動の実施・記録・分析(招聘事業)、(3)人文地理学や社会学の先行研究における「場所」「空間」を論じる論理的枠組みの芸能研究への応用の検討(文献調査)。 2024年8月にインドネシア(バリ島とロンボク島)で現地調査を実施し、芸能実践の現場を調査し、実践者へのインタビューを行う予定である。特に「どこで」「誰と」「どのように」芸能の上演技術を習得してきたかに焦点を当て、引き続きさまざまな個人の経験を分析したい。寺院個人宅、路上、集会所など複数の場所での音楽実践を参与観察すると同時に、人々の経験を聞き取り調査から明らかにする。(2)2024年度末にインドネシアから音楽家一名を招聘する事業の実施と準備を予定している。バリの若手音楽家を招聘し、日本とバリの二つの場所で共同で作品を創作し、日本では日本人音楽家との共演によるレクチャー・デモンストレーションを実施する。並行して音楽家との対話を重ねることで、この一連の共同作業のプロセスを記録し、後日考察の資料とする予定である。この事業では研究者だけでなく、音楽家もまた共同作業と思索を経ることで、新たな知見や経験を得ることを目標としている。 また研究の中間報告として国際学会での口頭発表と論文執筆を目標とする。国際伝統舞踊学会の東南アジア芸能研究グループ会合(2024年6月、フィリピン)及び、国際伝統舞踊学会国際大会(2025年1月、ニュージーランド)で研究発表を行い、海外の民族音楽学者と意見および情報の交換を行う。また日本のインドネシア芸能実践の状況を分析し、日本社会に独自の地域性や場所性について考察し、論文としてまとめる予定である。
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