Project/Area Number |
23K00199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
稲田 亜紀子 女子美術大学, 芸術学部, 准教授(移行) (90307091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 秀信 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (30726287)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 無機顔料 / 絵画材料 / 日本画 / 材料工学 / 鉱物顔料 / 銅系無機顔料 / 岩絵具 |
Outline of Research at the Start |
日本画における天然群青(アズライト)・緑色(マラカイト)は、銅鉱などから産出される塩基性炭酸銅を原料に、粉砕と分級によって製造され、古くから重要性の高い美術品や壁画に使用されてきた。近代以前には世界各地で見られた鉱物顔料は修復においても欠かせない色材であるが、近年の天然資源枯渇問題と同様の状況にある。現在、海外において流通する化学組成の近い青色顔料はいずれも細かく、幅広い粒度分布を持つ天然岩絵具の代替には独自の開発の必要がある。本研究では人工結晶との比較を通して、色材としての光学物性や環境安定性といった特徴を明確にし、岩絵具として望まれる特性についての学理を構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
天然岩絵具の評価として、粉末X線回折、蛍光X線分析、走査型電子顕微鏡、紫外可視光拡散反射測定により、結晶相、不純物成分、粒径、色度の分析を行った。産地や粒径の異なる天然岩絵具の不純物に関して、結晶中に取り込まれている元素と、別の結晶として共存している成分を特定した。 人工結晶の合成に関しては、新たに塩濃度勾配法や水熱ホットプレス法を緑青(孔雀石)の合成に採用し、最小で一次粒径が数十nm、最大で直径20mmの固化体の作製方法を確立した。また、大きな粒子に関しては粉砕・分級を行うことで所望の粒径に調整できることを確認した。 天然岩絵具と人工結晶の紫外可視光拡散反射スペクトルおよび色度を比較することにより、純度の高い塩基性炭酸銅は天然岩絵具(松葉緑青)と比べて青みがかっていることを明らかにした。これは塩基性炭酸銅結晶中に混入している不純物元素によるものと示唆される。また、天然の孔雀石の独特の縞模様に関して、従来は粒径の違いが色の違いとして現れていると考えられていたが、結晶外に共存する不純物も影響を与えることがわかった。これらの結果は天然岩絵具の代替材料として用いる人工結晶の設計指針となる重要な知見である。 人工結晶の岩絵具としての評価も開始しており、合成方法・条件により、発色や、膠水と混合時の伸びやすさ、筆おりの良さに違いが生じることを確認した。一部の人工結晶においては、天然岩絵具よりもむらが生じにくいという特性が見られ、人工結晶の利点となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
産地や粒径の異なる天然岩絵具に関して様々な機器分析を進めており、その中で共通する不純物に関する知見が得られた。 人工結晶の育成方法として塩濃度勾配法を採用し、塩基性炭酸銅(マラカイト)、塩基性塩化銅(アタカマ石)、塩基性硝酸銅(ロウアイト)の結晶育成条件を確立し、一部では0.1 mm程度の結晶を得ることができている。また、水熱ホットプレス法により最大で直径20 mmの塩基性炭酸銅の固化体を得ることができており、粉砕・分級することにより岩絵具として使用される様々な粒径に調整して供することができるようになった。 天然岩絵具と人工結晶との比較により、天然岩絵具の結晶中に取り込まれている不純物元素および結晶外に共存する不純物成分が色度に与える影響に関する知見が得られた。この結果は人工結晶の合成に関する設計指針となる。 また、人工結晶の岩絵具としての評価も先んじて開始しており、発色や筆での扱いやすさの評価も進んでおり、むらの少なさといった人工結晶の利点となる結果も得られた。 これらの結果は当初の計画通りの成果であり、先んじて人工結晶の描画性の評価も開始していることから、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
天然岩絵具の評価としては、現在販売されている天然岩絵具やその原材料となる鉱石に加えて、保存されている過去に使用されていた岩絵具に関しても評価を行うことで、天然岩絵具の変遷に関しても評価を進める。 人工結晶の合成に関しては、塩濃度勾配法による群青(アズライト)の合成条件を探索するとともに、人工結晶合成のスケールアップに挑み、感性評価に十分な量の試料を供給するための合成方法を確立する。また、天然岩絵具で特定された不純物に関して、人工結晶に添加することにより、より天然岩絵具の色度を再現するための試みを行う。また、耐熱性、対候性、耐薬品性といった環境安定性の評価も進め、人工結晶が天然岩絵具の代替となることを確認する。 感性評価において、人工結晶サンプルを描画・彩色技法の異なる複数の日本画創作研究者に供することで、基底材や墨などの絵画材料との相性や表現技法への影響に関して比較・調査を行う。
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