Project/Area Number |
23K00242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
荒 姿寿 女子美術大学, 芸術学部, 准教授(移行) (70635002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 千加 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30599056)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | 粉砕 / 付着 / ゼータ電位 / 染色 / 天然顔料 / 染色堅牢度 / 無機顔料による繊維の風合いを活かした染色法の確立 |
Outline of Research at the Start |
女子美術大学染織文化資源研究所は、鉱物質無機顔料の中でも複雑な組成を持つ「天然岩絵具(天然顔料)」を現代の粉砕技術で「遊星ボールミル」「ビーズミル」で1000分の1mm以下のサブミクロン粒子を独自につくりだし、その染色研究に取り組んで来た。現在、天然顔料においてこの様な粒子の市販品はなく、その試作研究は類の無いものである。工学の視点でも問題を整理する中で、染液の状態観察、分散状況の改善が顔料で染色する為に重要と判断し、岐阜大学高井千加准教授との共同研究が生まれた。将来枯渇が予想される天然顔料の良さを持つ染色に適した人造顔料の合成研究までを視野に進める世界の工芸染色技術に向けた基礎研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、天然顔料の優秀な染色メカニズムを科学的に明らかにし、人工無機顔料の合成設計指針とした。課題は、染色メカニズムを明らかにする科学的評価法の確立である。具体的には、顔料粒子の表面物性を知り、生地表面に付着し、固定化されるメカニズムを科学的に分析する。てぬぐい生地(総理)を対象とし、天然無機顔料マラカイト(炭酸水酸化銅 Cu2CO3(OH)2)を種々条件で粉砕後、粒子径分布を計測するとともに、既報で染色に有効であると分かった数百nmを再現よく粉砕できる条件を模索した。表面ゼータ電位を計測し、生地表面(負電荷)に対し静電的相互作用が高くなるよう、顔料表面に正電荷を持つ吸着剤を加え、染色工程を施した。染色生地を詳しく観察すると、生地を構成する200μm程度の糸が、染色前と比べて太くなっており、糸を構成するさらに細い20μm程度の細糸同士の隙間に微細な顔料粒子が入り込んでいることが確認できた。つまり、染色工程では、分散媒である水によって生地が膨潤し、細糸間隙に入り込んだ顔料微粒子が保持されることによって染色が行われる。そのため、粒子径が染色のしやすさを支配する要因の一つであることが証明できた。さらに詳細に電子顕微鏡で観察し、元素分析を行うと、顔料粒子の分布が不均一であることも分かった。これはおそらく生地が均一に膨潤していないため粒子が入り込める範囲とそうでない範囲が存在することが要因と考えられる。 また、粉砕時の色の明度・彩度を維持して染色することを目的とし、マラカイトの粉砕・染色試験を行った。マラカイトは液体の水に接している状態で、100度以下でCO2が脱離してマラカイトから黒色のCuOに変化する。この反応を抑制するために、A:CO2の分圧を上げる,B:温度を上げない,C:水以外の溶液を使用することを試した。A・B・Cそれぞれで色の変色を抑える結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
てぬぐい生地(総理)を対象とし、天然無機顔料マラカイト(炭酸水酸化銅 Cu2CO3(OH)2)を種々条件で粉砕後、粒子径分布を計測するとともに、既報で染色に有効であると分かった数百nmを再現よく粉砕できる条件を模索した。表面ゼータ電位を計測し、生地表面(負電荷)に対し静電的相互作用が高くなるよう、顔料表面に正電荷を持つ吸着剤を加え、染色工程を施した。染色生地を詳しく観察すると、生地を構成する200μm程度の糸が、染色前と比べて太くなっており、糸を構成するさらに細い20μm程度の細糸同士の隙間に微細な顔料粒子が入り込んでいることが確認できた。つまり、染色工程では、分散媒である水によって生地が膨潤し、細糸間隙に入り込んだ顔料微粒子が保持されることによって染色が行われる。そのため、粒子径が染色のしやすさを支配する要因の一つであることが証明できた。さらに詳細に電子顕微鏡で観察し、元素分析を行うと、顔料粒子の分布が不均一であることも分かった。これはおそらく生地が均一に膨潤していないため粒子が入り込める範囲とそうでない範囲が存在することが要因と考えられる。 また、天然サブミクロン・ナノ粒子顔料の染色条件について、粉砕時の色の明度・彩度を維持して染色することを目的とし、マラカイトの試験を行った。マラカイトは液体の水に接している状態で、100度以下でCO2が脱離してマラカイトから黒色のCuOに変化する。この反応を抑制するために、A:CO2の分圧を上げる,B:温度を上げない,C:水以外の溶液を使用することを試し、粉砕・染色テストを実施した。A・B・Cそれぞれで色の変色を抑える結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
どの程度の粒子径を持つ顔料粒子が、どの程度生地の細糸間に入り込めば目的の発色が得られるかは、顔料粒子の形状、表面物性が支配すると考え、生地を模したセルロース主成分の板状粒子を基板とし、種々顔料粒子の付着特性を整理し、汎用性の拡大を目指す。 また、遊星ボールミルの回転数により染色の色味に変化があることが確認できた。粉砕時に発生する熱により顔料が変色していることが考えられる。遊星ボールミルの回転数、時間の比較検討を実施し、天然顔料の持つ色の明度・彩度を維持できる染色方法の検証と染色後の堅牢度向上を目指す。
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