Study of national and international music policies in France during the 1960s and the 1970s: from multilayered perspectives
Project/Area Number |
23K00247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
田崎 直美 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (70401594)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 音楽 / 文化政策 / フランス / 芸術 / 20世紀 / 文化省 / 国際交流 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、フランスで本格的な音楽政策が文化省 (1959年設立) で議論され始めた第五共和政初期の1960~70年代を「フランス音楽遺産の普及」「革新的な創作の振興」「高い質の追求」「文化の民主化」という擁護すべき複数の価値観が多層的に存在した時期と仮定して、フランス国立公文書館とフランス外務省文書館の史料を体系的に調査し、自国音楽文化を促進する国内向け政策・対外政策 (文化交流) 双方を比較検討する。そして政策の多層性およびその交差のあり方を解明することで、1981年以降に推進された音楽 (文化) 政策の基盤と背景を理解するとともに、見過ごされてきた歴史的意義を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フランスで本格的な音楽政策が文化省 (1959年設立) で議論され始めた1960~70年代を「擁護すべき複数の価値観が多層的に存在した時期」と仮定して、フランスの国内向け音楽政策と対外音楽政策双方の実態を史料より検証する。そして政策の多層性とその交差のあり方を解明することで、1981年以降に推進された音楽政策の基盤と背景を理解するとともに、見過ごされてきた歴史的意義を考察する。 2023年度は対象時期を1960年代前半に絞り、フランスの①対外音楽政策、及び②国内の音楽政策への要望、の二つの観点から史料を分析した後に、両者を照合して関係性を考察した。①については先行研究、及びフランス外務省文書館所蔵の「フランス芸術活動協会 (AFAA)」評議会議事録を、②についてはフランス国立公文書館所蔵の文化省「フランスの音楽問題検討国家委員会」(1962~64年) 議事録及び関連する各種報告書を中心に、整理・分析した。 調査の結果、まず①では、多くの国と地域で偏りなく活動しつつも、特に遠方で大規模または権威ある一部の団体・音楽家による「フランスの威信」宣伝方針が実証され、ド・ゴール外交政策の音楽分野への反映が確認できた。②では、政府任命の有識者たちが音楽に求めたもの (高い質の追求・厳選) と、「国家計画」が求めたもの (文化産業による経済発展への貢献)及び文化省の方針 (文化 (音楽) の民主化) との間の深い溝が明らかになった。 ①②を照合した考察からは、対外的にも国内においても、保護すべき音楽活動を認定する際にはフランスの威信を背負う「国際的な権威」が基準となっていたことが判明した。一方で、対外活動と国内活動用の予算格差の大きさから、結果として国内での音楽活動に生じていた具体的なひずみについても明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は研究初年度として、1960年代を中心に、音楽に関するフランス国内の諸問題と音楽政策との関係の検証を行うことが当初の目標であった。この目標はほぼ達成できた。予備調査で収集した史料 (「1. 研究実績の概要」に記載した史料) に加えて、8月に実施したフランス国立公文書館での調査では、ランドスキの音楽政策に関する体系的な調査研究史料、及び上述の委員会終了から音楽課設置 (1966年5月) までの動向に関する史料を入手し、さらにはフランス国立図書館でランドスキの音楽教育政策に関する研究書 (LEFEBVRE 2014, 日本では入手不可) を入手したことで、必要な情報を補完することができたからである。
これらの史料に基づく研究成果は、次の形で発表した。 -1962年から1964年までの外務省AFAAの対外音楽政策と、文化省「音楽問題に関する国家検討委員会」(1962-64年)での議論内容とを比較して両者の関連性を考察した予備的研究結果については、昨年度末に学会で発表した [日本音楽芸術マネジメント学会 第15回春の研究大会(2023年3月)]。今年度はその発表内容を精査し、特に国内動向に関して追加考察をしたうえで、学術誌に研究論文として投稿し、掲載された [『音楽芸術マネジメント』第15号 (2024年3月)]。 -文化省「音楽問題に関する国家検討委員会」(1962-64年)での議論の流れと内容を精緻に検討することで、1960年代前半のフランス音楽関係者たちが政府に望んだこと、及びその後のM.ランドスキによる音楽政策(1966-1974年)との関連性、について考察した研究結果について、学会で口頭発表した [日本音楽学会第74回大会 (2023年11月)] ほか、学術誌に原著論文として投稿して掲載された [『関西楽理研究』第40号 (2024年3月)] 。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、フランスでは1970年代頃から音楽を「芸術」から多様な「文化活動」として捉え直す動きが音楽教育政策にみられる点に着目している。そこで次年度 (2024) はこの点に留意しながら、1970年代を中心に、引き続き国内向け音楽政策と対外音楽政策双方の実態を史料より調査し、多層的な「擁護すべき価値観」のありかたを考察する。 国内での音楽政策に関しては、1) 1970年代の初等・中等教育での音楽教育政策とその実態を検証するとともに、2) IRCAM (1970年設立決定) をめぐる政府の方針、及び前衛芸術を推進したIRCAM責任者のブーレーズが関与した音楽政策について検討する。音楽史で高く評価されているブーレーズだが、1970年代に彼が関係した音楽政策についての網羅的・体系的な先行研究は、まだない。そのため申請者が一次史料に基づいて基礎的情報の整理を行う(なおフランス国立公文書館所蔵の、IRCAM計画の詳細と経緯に関する史料は、今年度収集済み)。さらに、文化省音楽課責任者となったランドスキの方針 (民主化)とブーレーズの方針 (エリート育成主義) が1966年に激しく対立したことに着目し、対立の経緯とその後の展開を具体的に検証することで、「価値観の多層性」のありかたを明らかにしたい。 なお、今年度の政府及び音楽界の動向(1965-66年)に関して、まだ史料の整理ができていない部分があるため、次年度に引き続き整理と分析を行う。 対外的な音楽政策に関しては、フランス外務省文書館にて1970年を中心に音楽活動に関するAFAA報告書を網羅的に収集し、情報を整理・分析して変遷を考察する(なお1970年代前半の史料は、今年度収集済み)。 次年度における研究結果は、日本音楽教育学会、日本音楽マネジメント学会等で発表し、研究論文として『関西楽理研究』(査読付)で発表する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)