文学研究から中世禅を問い直す―千代野物語から新たな中世文学研究の可能性を考える―
Project/Area Number |
23K00276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
米田 真理子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (00423210)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 中世の禅 / 女性と仏教 / 千代野物語 / 中世文学 / 禅 / 女性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、文学研究の方法を活かして、通称「千代野物語」の具体的な検討を行うことで、中世における禅のあり方を問い直すものである。「千代野物語」は、尼寺で働く在俗の女性が見様見真似で修行をして悟りに至る過程を描いた、中世の女性の開悟を主題とする唯一無二の作品である。この物語の生成や享受の歴史的変遷を解明することによって、中世の禅宗における女性の問題を照らし出し、さらには本作品の文学史的位置づけを試みて、中世文学研究の新たな可能性を提示することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究計画に即して、以下の3つの研究を実施した。(1)本研究課題で主に扱う『千代野物語』の校訂本文を作成するための準備。金剛寺本と早稲田大学図書館本の写真を用いて本文の校合を進め、あわせて注釈作業を継続している。絵画を含む関係資料の調査としては、尾張徳川家二代藩主光友の描いた「千代能図」の画像を入手して、その位置づけを考察し、画像は(2)の論文に掲載した。(2)無外如大伝の生成についての考察。無外如大生誕800年を記念した論集を作成し、如大伝の生成について考察して、論文を作成した。関連する資料の紹介も行った。(3)海外での学会(EAJS大会・於ベルギー)で、「女性と仏教」をテーマにしたパネルを組み、「女人の身体」に着目した研究発表を行った。 『千代野物語』は中世に誕生した作品であるが、文学史への位置づけは、主人公の千代野が(2)で扱った無外如大の伝記に組み込まれたことが原因となって、困難だった。そこで、(2)の研究で、如大伝の生成の経緯を明らかにした。そのことで、物語の文学史への位置づけと、主人公の仏教史への位置づけを検討するための準備が整った。結果、『千代野物語』は、女性の仏教との関係を論じる上で、重要な作品であることが見えてきた。従来の研究では、平安中期から近世末まで、女性は、仏教的差別意識によって主体的な仏教実践は不可能だったと捉えられてきた。しかし、本作品では、女性の主人公が自ら仏道修行を行い開悟に至る様子が描かれており、従来の仏教史観では捉えきれない内容であることが明らかになった。女性に対する差別的な見方が存在したことは確かだが、そのことに固定された従来の研究視座そのものが問い直されることとなり、仏教史の見直しに繋がった点は意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた研究は、それまで数年かけて下準備を続けてきたもので、基礎的な調査に基づいた見通しが立っており、そのことで順調に進めることができた。 (1)の校訂本文の作成は、伝本の翻刻は既に完成しており、伝本間の対照も行っていた。それらの作業を基盤に、底本を定め、校合を進めることが出来ている。 (2)の研究は、無外如大の生誕800年を記念した企画に含まれるもので、その論集は2023年度内の完成を目指して数年前から作業を進めていたため、論文は着実に完成させることができた。 (3)の学会発表は、パネルの申請が前年末であったことから、やはりある程度、見通しを立てて臨めた。 このように、本年度の研究は、それまでの準備を基盤として、着実に遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って進めていく予定である。ただし、2025年度に取りかかる予定にしていた女性と仏教の問題については、2023年度に実施した研究の成果によって見通しが出来たので、2024年度より開始することにした。また、コロナ禍が2023年5月にひとまずの終息を見たことで、2023年度後半から、文献等の調査を再開したが、まだ規制が残るケースもある。そのため、今後もしばらくの間は様子を見つつ実施することにして、計画した年度を変更する場合も出てくるかもしれないが、補助事業期間中に確実に実施できるよう推進する。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)