平安時代末から室町時代の日本人著述駢文学筆記資料の整理と研究
Project/Area Number |
23K00334
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
道坂 昭廣 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20209795)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 古写本 / 日本漢文 / 駢文 / 文学理論 / 中国典籍 / 佚文 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本人によって著述筆記された駢文創作理論、技法及びそれらを解説する写本資料について、信頼できる情報を国内外の研究者に提供することである。そのため資料の所在を網羅した「日本人著述駢文学筆記書誌目録」(仮称)を作成する。資料の調査収集とともに、精密な校勘を行い正確なテキストを作成する。従来の駢文作成理論研究は、作品から駢文の規範を帰納するという方法が用いられていた。日本の写本は、唐、南宋・元・明時代に行われていた駢文作成論を反映していると考えられることから、本研究では逆に、これらテキストが示す規範や原則から同時代の作品を考察しようする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大学図書館を中心に、五山僧侶の駢文創作法を記録した文献の調査を行った。その多くは写本であり、同一書名であっても文字の異同はもちろん、章立てなどの構成も異なり、更に内容について分岐が大きいことがわかった。そのためまず底本となるべき写本を選定するため、各大学より複写許可を得た写本の検討をおこなった。 その作業のなかで、それら写本の多くで虎関師鍛の『四六文章体』の内容が一部引用されていたり、或いは該書を敷衍しているような内容の写本が多いことに気付いた。そこで天理大学図書館所蔵の『四六文章体』を底本としつつ、この書の読解と他の写本の校勘作業を進めた。 五山僧による著述或いは編纂と思われる写本は、京都大学附属図書館の他、九州大学図書館、神戸大学図書館、慶應大学図書館、天理大学所蔵のものを調査した。中でも慶應大学附属図書館が所蔵する『駢儷句法』は他の図書館に所蔵をみつけられない孤本であり、その内容を詳細に検討した。その結果、この写本もまた虎関『四六文章体』を中心としながら、策彦和尚、江西和尚らの駢文関係の著述を引用改編して編纂されているものであることを明らかにすることができた。初歩的な考察に止まっているが、この検討の成果は、中国江蘇省揚州市で開催された「駢文国際学術研討会曁第八届駢文学会年会」で発表した(Zoom参加)。 このほか、『懐風藻』の序、小伝の内容を検討し、その編纂意図についても北京大学で開催された国際学会「北京論壇2023」で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相変わらずの新型コロナの流行の影響で、各地の図書館に調査に赴くことが充分にできなかったが、本科研の資金を利用し、五山僧侶の駢文作成法についての筆記の複写取り寄せ、それら複写本を利用して寫本内容の検討を行うことができた。これらの調査により五山僧侶たちが当初予想していた以上に熱心に駢文の作法を学んでいたこと知ることができた。またそれらの作法書のなかで虎関『四六文章体』が大きな位置を占めていることが明らかになり、該書を室町時機の駢文作法書の検討の中心にするという方針を定めた。また興膳宏博士の中国文学理論の流れに関する論著(例えば「創作技法論の展開」)を再読し、中国において文学理論書が原理から実用性へと変化してゆくという著述に啓発され、日本の駢文解説書においても同様の傾向があることに気づき、『王沢不渇鈔』が『文鏡秘府論』をさらに実用化させてた理論書ではないかとの観点から精読をはじめた。このように平安末期から室町時代に至る、日本の駢文研究の変化、あるいは駢文作成目的の変化といった視点からの研究を行うという方針をより明確化することができた。 ただ本研究の目的としていた「日本人著述駢文学筆記書誌目録」について、実際に写本類を調査してみると、虎関ら複数の僧侶の著述を抜き書きしただけのものもあり、その目録作成の有効性については再検討するする必要があることに気付いた。このことが「おおむね」順調とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目の本年は引き続き駢文作法書・筆記の所蔵調査を行う。ただ1年の調査で五山の僧侶による駢文作法の筆記は、抜き書き類に過ぎない場合もあることが明らかになったので、より慎重に内容を検討する必要がある。それらを精査したうえで、虎關『四六文章体』など重要な写本を選び、底本を決定した上で、校勘を行い、また原典の復元の可能性を検討する。既に指摘されているように『王沢不渇鈔』は『文鏡秘府論』の影響を受けている。ただ具体的な指摘や、その継承がどのように変化しているかといった検討は不十分であるように思われる。この問題は興膳宏博士の中国文学理論史の考え方を援用して日本における特に散文作成理論の変容を跡づける。 1年目の調査で室町時期は五山の僧侶の駢文作成が盛んになるが、この問題は仏教儀式において駢文作成が必須とされていたことと強く関わっていることが本計画1年目の調査で感得された。本年は仏教儀式とそれぞれの場面で要請された駢文の技法という観点から考察を進める。 『王沢不渇鈔』と虎関『四六文章体』を本研究が注目する時期の前半と後半の中心的典籍に位置づけ、それらを精読しつつ日本における駢文作成法が実作品にどのように反映されいるかについて、五山僧侶の文集から検討する。これについては本計画1年目に彼らの文集を収集しており、利用する。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)