宝巻の変遷史における明末清初の物語宝巻の流伝状況についての研究
Project/Area Number |
23K00345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 リン 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (80367151)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2027: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 宝巻 / 話本 / 花灯轎蓮女成佛記 / 宣巻 / 明末清初の通俗文芸 / 明清通俗文学 / 説唱文学 / 通俗文芸 / 語り物 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、宝巻の変遷史の上で極めて重要でありながら、踏み込んで研究されていない「沈衰期」の実態を明らかにすることを目指すものである。宝巻文学の変遷史における主要な問題――民間教派による物語宝巻の伝播、俗曲の流行り廃りによる宝巻スタイルの変化過程、信仰対象の変化による物語の変容にまつわる問題は、宗教教派期と宝巻の「沈衰期」とされる時期において、いまだ充分に解明するには至っていなかった問題である。本研究では、同時期の宝巻の変容過程をさらに綿密な考察を行うことによって、これらの問題をより明らかにすることを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では本課題の段階的成果として、論文「『続金瓶梅』に見える「蓮女成仏公案」をめぐって」を発表した。本稿においては、『続金瓶梅』第三十八回に見える『花灯轎蓮女成佛宝巻』を一つのモデル作品として、その形式と内容について分析し、それを通して明末清初における宝巻の転換期の様相の一端を明らかにした。 明末から清の嘉慶以前まで、物語宝巻のスタイルは、教派宝巻はますます複雑化になっていき、教派でない民間の宝巻、すなわち因果応報を説く民間の物語宝巻は簡略になっていくという変化の傾向が認められる。とりわけ、現存する清初の江南地域の宝巻は、明末の中原地域で大流行した宗教教派による影響がほとんど見られなく、より娯楽化、簡単化したという地域的特徴が見られる。また中原地域における宝巻のスタイルは七言または五言の詩讃は、その直前の散文(説)の内容の繰り返しであるのが一般的である。『続金瓶梅』は清初の山東で成立したが、しかしその中で見える『花灯轎蓮女成仏宝巻』の全体的スタイルはむしろ、当時の江南地域の宝巻に見られるような簡略なスタイルになっている。 『花灯轎蓮女成仏宝巻』の存在は、順治年間以前に因果と説く仏教説話の宝巻は形式において、すでに早期の仏教宝巻よりかなり簡単化したことを示唆する。清初の中原地域では類例を見ないスタイルを呈しており、むしろ同時期の江南地域の宝巻と物語化、娯楽化した仏教宝巻と類似する形式が見られるのが興味深い。『続金瓶梅』の作者丁耀亢は山東の人であるが、江南を遊歴したことがあることから、明末清初の江南で流行した宣巻の形式を取り入れた可能性も否めない。また物語の内容の分析から分かるように、『花灯轎蓮女成佛宝巻』は当時すでに成立し流布していた単行の宝巻ではなく、作者丁耀亢が説経類の一種とされる話本物語「花灯轎蓮女成佛記」をそのまま引用し宝巻化した可能性が極めて大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者の専門分野は明清時期の通俗文芸、即ち、明清小説・演劇と、それらの基底としてより古い歴史を有する語り物芸能である。具体的な研究ビジョンは、従来ばらばらに研究されてきたこの三者を、統一的な視点から捉え、相互の有機的な繋がりと演変の過程を解明していこうとするものである。この研究補助期間の5カ年(2023-2027年度)では、宝巻文学の変遷において、従来、顧みられてこなかった明末清初の宝巻の流布、受容状況の一側面も明らかにした。 2023年度では、これまでの研究を踏まえて、明末清初の現存の宝巻の数量に乏しい中、その近隣の通俗文学(明清白話、話本、仏教説話など)も素材として検討し研究を進めた。従って、順調に研究課題を遂行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は宝巻史全体の流れをうまく繋ぐために、まず深く追求されなかった女性文化を手がかりに、宝巻の担い手、受容地域、地域文化的な変遷を考察し成果を発表した。次いで、民間教派による物語宝巻の伝播、俗曲の流行り廃りによる宝巻スタイルの変化過程、信仰対象の変化による物語の変容にまつわる問題は、宗教教派期と宝巻の「沈衰期」とされる時期において、いまだ充分に解明するには至っていなかった問題である。これらの問題をより明らかにするには、今後、引き続き同時期の宝巻テキストを蒐集し、その変容過程も具体的に検証する必要があると考える。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)